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『売買できないトークン「Soulbound」をバイナンスが実装へ』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.8.2

■バイナンス、SoulboundトークンをBNBチェーンで発行へ

大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは、新たなトークン「Binance Account Bound(BAB)」を発行する計画をメディア向けプレスリリースで明かした。

BABは、譲渡不可能なNFT「Soulboundトークン(SBT)」をBNBチェーン上で発行するもの。これから様々なユースケースを探っていく計画だが、まずは試験的にバイナンスの本人確認で使用するという。

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が提唱したことで注目を集めたSoulBoundトークン(SBT)ですが、バイナンスがBNB上で実装、BABというSBTを発行するというニュースです。


■トークンは8種類に分類

アセットトークン / セキュリティトークン / ステーブルコイン
ユーティリティトークン / ガバナンストークン / ソーシャルトークン
NFT(ノンファンジブルトークン) / SBT(ソウルバウンドトークン)

と、このサイトの記事では8種類に分類しています。

「カレンシータイプ」と「アセットタイプ」というキーワードで説明される場合もあります。この場合、前者が「暗号資産」で、後者が「トークン」とほぼ同義と捉えて良いでしょう。

「カレンシータイプ」マイニング(採掘)するタイプのことを指す。ビットコインなどのように発行枚数の上限が定められていることやマイニングに参加することで報酬としてトークンを受け取れることが特徴で、ビットコインやイーサリアムなどがこのタイプに当てはまる。

「アセットタイプ」発行者が存在し、その発行者が供給量を決定できることが特徴で、いわば「株式」のような性質を持つ。さらに、自由に売買できるものの、トークン自体は特定の発行者が提供しているサービスに過ぎないため、企業やプロジェクトの状況によって価値が左右されるという特徴ももつ。

この分類は用途と発行方法の組み合わせで命名するかたちなので重複が発生します。ややこしいですね。

実際、アメリカのSECなど規制当局の見立てでは主体の存在する第三者の頑張りによって価値が上昇するトークンはすべてセキュリティトークンである。ユーティリティトークンやガバナンストークン、NFTも全部セキュリティトークンである。セキュリティトークン=証券なのだから当局が規制可能である。という論法を持ち出しています。(Podcastでそのへんを詳しく説明している音源はこちら

でもトークンの8分類については今回は余談です。

重要なのは、SBTだけが譲渡不可能なトークンと定義されていることです。他の7種類は譲渡可能です。そこが一番の違い。


■譲渡不可能なトークンが活きることとは?

今回バイナンスで実装されるのは本人確認の証明書としてのユースケースです。

このSBTをBNBチェーン上で発行したトークンがBAB。まずは試験的に、本人確認の手続きを済ませたユーザーが、バイナンスのモバイルアプリを介して発行できるようにする。ユーザーはBABをウォレットで表示させることで、自身が本人確認済のユーザーであることを証明できるようになるが、将来的には、エアドロップ(無料配布)や投票の権利として利用したりして、様々なユースケースを探っていくという。

他にも

SBTには、認証情報、教育資格、プロジェクトへの貢献、過去のローン履歴といった個人の信用に関連するデータを組み込むことが可能。これらの特徴からSBTは、Web3(分散型ウェブ)時代のアイデンティティ(ID)の構成要素になると期待されている。

というユースケースが想定されています。

現実世界になぞらえると、

・生まれた=出生証明
・小児ワクチン接種=母子手帳に記録
・小学校に入学=学歴証明
・学校で勉学に励む=試験結果、通知表
・高校、大学を卒業した=卒業証明書
・資格を取った=資格証明書、免許状、免許証
・就職した=就業証明書
・収入を得た=確定申告書
・車や家を買った=所有権の権利書
・引っ越した=住民票
・結婚した=婚姻証明書
・戸籍を独立した=戸籍謄本、世帯証明
・子どもができた=出生証明、家族証明
・日常の買い物=カードやポイントの履歴

などなど、行政や学校、民間組織などが個別に個人の履歴を発行しています。そしてそれらは概念的に譲渡不可能なものです。

これらをトークンとして発行することができれば改ざん不可能で第三者が確認可能な正当な証明書として機能しそうです。

民間企業の私的サービスは改ざんというか間違い訂正も含めて変更もできますし、行政記録すら最近は改ざんがされるケースもありますので、ブロックチェーンに記録する方が信用度が高いかもしれません。


■DID+ウォレット紐づけでSBTは真価を発揮

個人を軸に例を挙げましたが、企業など法人、国家政府などを軸にしても使えるものが多くあります。個人や企業に一意の分散型IDを持たせるDID(Decentralized ID)とセットで将来はSBTが普及するのではないかと期待しています。

そしてDIDに紐づけた自分のウォレットですべてのSBTが一覧できれば最高です。異なるチェーンをひとつのDIDにまとめられるのか、DIDに複数のウォレットを紐づけたときの使いやすいUXは、など課題がたくさんありますが、自分の履歴や自分の証明書は一元的に見たいですからね。


■SBTは誰でも信用度を高める効果

この信用度を高める効果こそ期待すべきところだと考えています。

行政や大企業は別のカタチで一定の信用を得ていますが、第三者が誰でもいつでも確認できるメジャーなパブリックブロックチェーン上に置かれていれば誰でも非常に高い信用度を獲得できます。

もちろん情報の秘匿性やプライバシーの問題もあり、何でも公開すればいいというものではありませんが、確認しようと思えば必ず確認できる、ということが担保されていればOKです。

データや証明書について誰でも高い信用を得られるという意味では、小企業や個人など信用が低かった人たちこそSBTの恩恵を受けられます。

これからLearn to EarnのようなGameFi系dAppsもどんどん増えてくるでしょう。そのパブリッシャーは私企業や、もしかすると個人かもしれません。そんな人たちでも客観的に信頼できるProof of KnowledgeのSBT証明書を発行すれば、発行そのものの信用度が高められます。

(発行された証明書の中身は別の問題。コンテンツが意味のあるものでないといけません。)

もちろん大企業や行政でも改ざんしていない証明で信用度をより高めなければならない状況にはありますが、信用が得づらい小企業や個人の方がSBTの恩恵を受けやすいと言えます。


■dApps全部でSBTを発行すると面白い

インターオペラビリティ(相互運用性)あればこそ、のアイディアではあるのですが、dAppsの利用履歴、GameFiのプレイ履歴などを全部SBT化できると、それだけで面白いデータになりそうな予感がします。

詳しい人を見つける、同じdAppsユーザーのコミュニティを作る、求人など人材マッチングを行うなどでSBTによる履歴を参照・突合できそうな気がします。

特に今のWeb3黎明期はdAppsをどれくらい使っているか自体がPRになったり、欲しい人材像がイメージできたりします。STEPNやっていればto Earnの構造やFTの送金方法は最低限知ってるよね、の共通言語化できたりしますし。

DIDが普及するのはずっと先だと言われていますのでSBTが進化を発揮するのはもう少し先になりそうですが、個々のdAppsでSBTを発行する前提があれば、DIDが普及し分散型メタバースに多くの人が住み始める未来では、通信参照だけで相手がどんな人なのかざっくり把握できたりする「超リッチな名刺交換」もできそうです。

SBTはトレードできずお金にならない、のは短期の話。未来はSBTによる信用で回る経済とコミュニケーションが中心になるんじゃないかと妄想しています。

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