『NFTチケット販売プラットフォーム「TicketMe」はNFT全開の方がおもしろそう!』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.8.16
■【日本初】NFTチケット販売プラットフォーム「TicketMe」
イベントやライブなどのチケットをNFT化して販売するプラットフォーム「TicketMe」が9月中旬の正式リリースに向けて事前登録を開始したというプレスリリースです。日本初と聞いて「まだなかったのか」と意外な印象を受けました。
チケットをNFTにすることの意味やメリットは数多くあります。それとは別にチケットの電子化とオンライン販売のニーズと課題がもともとあり、「TicketMe」がNFTとは関係なく良い解決策になっていると感じました。
■電子チケット化のニーズ
チケットをNFT化して販売できますよ!が全面に立ったリリースになっていますのでNFTやweb3に興味がある人が初期ターゲットだと思いますが、「TicketMe」はNFTを訴求しなくても魅力的な電子チケット販売プラットフォームです。
イベント主催者・チケット販売者向けのメリット説明で、この「お試しがしやすい」という欄にはNFTという言葉が登場しません。
シンプルに手数料が低く、他のチケット販売サイトとの併用が可能という点がメリットです。
選択できる決済方法の充実や、プラットフォームとしての会員増による宣伝効果などはまだこれからですが、安い・導入しやすい、は良い点です。
イベントを開きたい、電子チケットで販売したいと思った時に、独自開発だと個人情報管理や開発、キャンセルや変更の対応が面倒です。手軽に使えて手数料が安いチケッティングサービスがあるのはそれだけで嬉しい。
多くの興行主にとってチケットがNFTかどうかはまだ関係がなく、導入しやすい電子チケットサービスだという点が真っ先のメリットです。
■NFTならではのメリット
このリリース文だけを読むと誤解しそうなのがココです。
リリース内でNFTならではのメリットとして謳われているのは
これだけなのです。
自分の思い出としてなら紙のチケットの半券で昔から実現されていますし、本当に参加したことを証明する必要がある場合もチケット販売プラットフォーム側にある履歴を参照できればNFTでなくても実現できます。
プラットフォームが外部から購入履歴を参照させてくれない、ログを一定期間で削除する、プラットフォーム自体がなくなる、という問題はNFT化によって解消されるかもしれませんが、イベントの参加証明だけだとNFTであるメリットを感じにくいのは間違いないと思います。
「TicketMe」のmediumには、彼らが考えるNFT化のメリットが書いてあります。
こちらも書き方は簡素ですが濃密な要約だと受け取りました。
単に電子チケットを売りたいだけの興行主に、あえてNFTチケットにしたいと思わせることができるメリットがこの3つの箇条書きに集約されています。
ただこの箇条書きだけだとNFTに詳しい人にしか伝わらずもったいないと感じます。応援したいので勝手に嚙み砕いてみます。ただし「TicketMe」のリリースに書けなかった理由は想像できるので、以下はNFTチケットの一般論として捉えてください。
①ユーザー体験とコストにおける優位性
これはたくさんあります。
チケットを売る・買う際に個人情報の登録が一切不要です。
ウォレット接続して暗号資産建てで買うだけです。売る側も買う側も情報管理は一切不要です。
グローバルにチケットを販売したい場合、各国ごとに異なる通貨をETHなどに共通化することができます。クレジットカードを通じれば海外の法定通貨建てでも買える場合は多いですが、マイナーな国だとクレカでも両替が無理だったり手数料がべらぼうに高かったりします。
入手したチケットをイベント当日に使う際も、ウォレット接続するだけで所有していることが確認できます。チケットを確認するためにプラットフォーム側が指定する機械やシステムは不要です。
ウォレットや暗号資産に慣れた人にとっては、従来のチケッティングより圧倒的に楽で低コストです。が、慣れていない人にとっては恐ろしいほど高いハードルに感じるかもしれません。
このハードルを下げる方に注目し、ユーザー体験を従来型の電子チケットと同じにする方を訴求しているのでNFTならではのUX改善は今回のリリースでは触れられていないようです。
②プラットフォームを横断しても共通の規格として使える相互運用性
NFTの規格自体が共通なら、どのNFTマーケットプレイスで販売されてもチケットとして機能します。
OpenSeaで一次から販売されても、イベント告知サイトで直接販売されても、どちらもNFTとしては共通、同じものです。
チケットを持っていることを確認する方法も、チケット販売プラットフォームの仕様に全く依存しません。ウォレットにNFTがあるかどうかを確認するだけです。
ただしこちらも「ウォレットを持っていない人も買える・買ってもらえる」方を訴求ポイントにしたため、NFTである利点が薄まってプラットフォームに依存するかたちになっています。
③転売時に発行元がマージンを受け取れるプログラマビリティ
チケットは転売対策が長年の課題でした。
NFTチケットで期待されるのは転売にいろんな対策方法が打てることだと思います。
転売を完全に禁止することも、転売時にも興行主にロイヤリティが入るようにすることも、どちらもできます。
完全に転売を禁止したければ初期に購入されたウォレットアドレスから移動した履歴があるチケットを入場時に無効判定すればOKです。
転売時のロイヤリティ設定はOpenSeaで有名になったのでご存じの方も多いと思います。チケットが高額になりすぎて届けたいファンに広く届かなくなる問題は発生しますが、ダイナミックプライシングと称して需要に対して適切な値付けがされると捉えればこれもひとつの販売方法です。
■時代が追い付くの待ち
今回のプレスリリースには敢えて載せなかった理由はなんとなく理解できます。NFTや暗号資産、ウォレットのメリットよりも、興行主の不安解消の方を優先せざるを得ないのが現状の市場理解だと思います。
ただイベントの参加証明しか掲載しないと「わかってない?」「NFTである意味がない?」と誤解されそうでもったいない。まだ時代が追い付いていないだけです。
「TicketMe」はNFTであることを一切伏せても便利に使えそうなチケッティングサービスだと思いますが、会員数を増やすのはこれからでターゲティングセールスや参加履歴によるレコメンデーションが可能になるのはもうちょっと先です。そうなると既存先行のチケットプラットフォームに対する優位性が取れません。
であるなら、NFTであることのメリットをもっと活用した打ち出し方の方が未来にもっと面白くなりそうな気がします。
■Nextガチャ=シーズンチケットの基盤も
完全に妄想ですが「TicketMe」は広い意味でNFTチケットの基盤になると面白いんじゃないかなと思いますし、可能なら使ってみたいところです。
たとえば過去にNFTチケットを購入した人に対してイベント独自のトークンをエアドロするEvent to Earnの導入や、NFTのSBT化による参加証明を認証する機能のAPI提供などができれば、NFTであるメリットをより活かせそうです。
「過去に参加したイベントのチケットNFTを持っている人だけに〇〇する」の実現に必要な機能を一式提供するのです。チケットをNFT化するのにも難儀する人にとっては、認証やトークンの実装はもっと大変ですから。
これら機能が標準装備されればメタバース上のイベントなんかは非常にやりやすいですね。
さらに、興行チケット以外にも幅を広げます。GameFiの基盤プラットフォームとしての活用案です。
ブロックチェーンゲーム(BCG)がこれからもっと増えてくる中で、現在のスマホゲーム、ソシャゲでは一般的な「ガチャ」がRMT的なto Earnと結びつくことで賭博扱いされ、より規制が厳しくなる可能性が高いと言われています。
規制が広まった時に次なる収益源がフォートナイトのバトルパスのような「シーズンチケット」制です。
これも「チケット」です。BCGではこれをNFTで販売することは容易に想像できます。
BCGを開発する時にNFTチケット販売基盤がASP提供されるなら開発工期を短縮できたり監査を分離できたりして非常にメリットがあります。
「イベント」もライブや興行だけでなくゲーム内のイベントも幅広くターゲットにできればマーケットは巨大化できますし競合もほとんどいません。
こんな感じで、「TicketMe」は「チケット」というものをより幅広く解釈しなおすことで規制強化後のゲーム業界の基盤になる可能性もあると思います。
なにしろNFTに突き抜けた方が面白そうです。
歴史の長い興行界がNFTチケットを一般的に使い始めるのはもうちょっと先でしょうし、そのころにはチケットぴあやローソンチケットがNFTチケットを扱っているでしょう。そんな時代を待つより今から突き抜けたNFTの使い方に振り切った方がきっとエキサイティングです。
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