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『「Web3」と「Web3.0」は別モノ。現実資産(RWA)は次の暗号資産ブームを呼び込むか?をきっかけに考える』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.10.3


■現実資産(RWA)は次の暗号資産ブームを呼び込むか?

RWAをトークン化するメリットとして資産の小口化や取引の透明性、決済効率などが挙げられるが、何より期待されていることは金融市場のお金がRWAトークンを通じて暗号資産市場に流入することである。暗号資産には投資できなくても、既に取引している資産を裏付けとするトークンであれば機関投資家を含めて幅広い層の投資対象になりやすい。

RWA(Real World Assets、現実資産)のトークン化に関する話題です。

RWAというキーワードが暗号資産界隈、ブロックチェーン界隈でにわかに注目を浴びて1年くらいになるでしょううか。うちでもたびたび(というか結構頻繁に)取り上げてきました。

RWAとは?については上記などを参照ください。


RWAブームは暗号資産市場に資金が流入しやすくなることがメリット

RWAは「現実資産をトークン化することで、世界中から買いやすい・小口化して個人でも買いやすい、透明性が高く安心して取引できる」など、裏付け資産になっている「モノ」側から語られることが多かったのですが、今回ご紹介するマネックス証券の松嶋 真倫さんは別の視点を提示していて興味深く拝読しました。

暗号資産業界側から見たRWAが流行るメリットは、「伝統的な金融機関や機関投資家から暗号資産市場へ資金が入ってきやすくなること」としています。

むしろ既存金融から暗号資産界隈への資金流入を目的化するためには、「現実資産による裏付け」や「価値変動しづらく理解しやすい法定通貨にペッグされたステーブルコイン」が必要なのだとも読めます。


これまでのNFTや草コインは機関投資家が入りづらかった

裏返して、これまでのNFTアートやプロジェクトに紐づいたFT(ファンジブルトークン、いわゆる仮想通貨)は、クリエイターの人気や信用度、暗号資産業界全体の盛り上がり度合いやビットコインの価格相場など、不確実な要素にひっぱられることが多く、既存金融業界から見ると投資対象にしづらいものでした。

個人投資家やギャンブラーからすれば、ゼロから価値を生み出せる「錬金術」の側面や、一夜にして数百倍に価格上昇するようなところに夢を見られたわけですが、資金の総額はやはり大きくありません。

暗号資産業界が市場としてきちんとできあがるには、銀行や機関投資家などの伝統金融などが大きな資金を投入して、循環するお金が大きくなることが必要で、RWAという裏付け資産があり、ステーブルコインで売買するなら、伝統金融からも比較的安心して投資できます。


暗号資産の活性化につながるかというと?

米国ではビットコイン現物ETFの実現によって暗号資産市場への投資家参入が進むことが期待されているが、RWAも同じ文脈で期待が高まっている。前者のETF化が暗号資産を金融市場に持ち込むものだとすれば、後者のトークン化は既存の金融資産を暗号資産市場に持ち込むものであり、どちらもが合わさって次の暗号資産ブームは形成されるのかもしれない。

実は今回、この記事を読んで最初に感じたことは「RWAで機関投資家が資金を投じやすくなったとして、それは『暗号資産市場』に投資したことになるのだろうか?」という点でした。

技術的にはブロックチェーンを使いますが、機関投資家が投資しやすいと想定されているRWAの多くはプライベートチェーンやコンソーシアムチェーンを使い、独自のステーブルコインを発行して取引することが前提になっています。

イーサリアムなどのパブリックチェーン上で、ETHを決済通貨としたRWA NFTマーケットプレイスもあるにはありますが、ETHの価格の不安定性や企業会計での扱いづらさなどから機関投資家は避けがちです。

欧米ではバンク・オブ・アメリカやシティ銀行、ドイツ銀行など大手金融機関がRWAのトークン化プラットフォームの開発に取り組んでいる。日本でも三菱UFJ信託銀行が中心となってステーブルコインやRWAトークンの発行基盤「Progmat(プログマ)」の普及を進めており、メガ信託銀行やSBIグループ、NTTデータなどが参画している。

上記のような各社の取り組みが成功してRWAというものが世間に根付いたとしても、暗号資産業界には資金流入したことにならないのではないかと思うのです。

ブロックチェーンやNFT/STの実用例にはなりますが、RWAの成功でBTCやETHが買われたり普及したりすることはなさそうです。むしろ金融機関が仕掛けるRWAプラットフォームは「中央集権」だとして拒否反応すらありそうです。


「Web3」と「Web3.0」は別モノ

これは、「Web3」と「Web3.0」の違いだと自分の中では整理しました。

「Web3」は当初の仮想通貨ブーム、NFTブーム、DeFiブームなど、デジタル上の別世界で必要なものを取り揃える活動のことです。3D空間だけでない、概念的な別世界としての「メタバース」を構築しようとする一連の活動が「Web3」だと捉えています。

「Web3.0」は、「Web1.0」「Web2.0」というインターネットテクノロジーの進化によって現実世界がより便利に効率よくなってきたことの延長線上にあるものです。ブロックチェーン技術を使うことで、Web2.0以前ではできなかったことを実現しようとしますが、革新の対象はあくまでも現実世界です。

Web3がWeb3.0の略称や別名で、基本は同義だと捉える向きも多かったのですが、「ウェブスリー」だと自称する大勢の人たちと話をするにつれ、「Web3」な人と「Web3.0」の人は目指しているものも考え方も全然違うことに気が付きました。

「Web2.5」という言葉遣いをする人は「Web3.0」側にいます。

WIREDで特集された「Web3 所有と信頼のゆくえ」での取り上げられ方は、一部未分化なところもありますが、「Web3」側の発想が多いように感じます。つまりデジタル上の別世界・別国家を作るような発想です。

「Web3.0」や「Web2.5」では、本質的には仮想通貨が必要ありません。法定通貨の世界観の中にありますので、法定通貨だけでも成立するものが多く、仮想通貨が入ってくることに違和感があるプロジェクトが多いのもそのせいです。

「Web3.0」の発想をする人は、現実世界ですでに成功している人に多いように感じます。従って年齢層が高めです。不確実な別のルールの世界をつくるニーズがないどころか、そんな世界がない方がありがたいからでしょう。

「Web3」の発想をする人は、若い人が多いように感じます。現実世界のルールの中での成功体験がまだないか、むしろ不都合を感じて変革したいと感じているからかもしれません。


RWAは「Web3.0」の仕組み

RWAが伝統金融から資金流入を図りやすいものだとすれば、それは「Web3.0」の世界線です。

そのため、RWA=「Web3.0」に機関投資家がたくさんの投資をしたとしても「Web3」への資金流入にはならないのではないかと思うのです。


「Web3」と「Web3.0」のどちら側にいますか?

個人的には「Web3」も「Web3.0」もどちらもおもしろいと感じますが、どちらかというと「Web3.0」系の、現実世界を改善するためのブロックチェーン技術の活用方法を発想することのほうが多いかな?と思います。歳のせいもあるなと思います。

ネットの世界に住める「Web3」の魅力もすごく感じます。革新的でおもしろいですが、マスになるにはかなり時間がかかるだろうとも思います。

「ウェブスリーやってます」なみなさんが取り組んでいるのは「Web3」と「Web3.0」のどちらですか?

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