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社会制度の基本理念として、人の可能性を信じること(鬼滅の刃「無一郎の無」より)
(本記事は「鬼滅の刃」に関するネタバレ情報を含んでいます。)
世間で話題のマンガ「鬼滅の刃」、私も読んでみましたが、やはり面白いです。このマンガには、私たちが生きていくために必要なメッセージが、たくさん込められています。
今日はその中から、第14巻 第118話「無一郎の無」についてご紹介します。
この第118話には、私たちが自分たちの社会をどうしていけば良いのか、教育や子育てにも通じるメッセージが込められています。
「無一郎」というのはこのマンガの登場人物で、十代の少年です。
無一郎には双子の兄がいました。十歳の時に両親が亡くなり、兄弟二人だけでなんとか生きていました。
無一郎は兄を慕い、無邪気に話しかけます。しかし兄は無一郎に向かって無情に言い放ちます。
「無一郎の"無"は"無能"の"無"だ」
「無一郎の"無"は"無意味"の"無"だ」
そして自分たちにできることは「犬死に」と「無駄死に」だけだと叫びます。
ある日、鬼が突然、兄弟たちを襲います。無一郎は剣士としての才能を発揮し、鬼を撃退しますが、兄は鬼によって殺されてしまいます。
その兄が命尽きる直前、意識朦朧とする中で(無一郎が鬼を撃退したことを知らないまま)こう言ったのでした。
「神様…仏様…どうか…弟だけは…助けてください…」
「弟は…俺と…違う…心の優しい…子です…」
「人の…役に…立ちたいと…いうのを…俺が…邪魔した…」
「悪いのは…俺だけ…です。バチを当てるなら…俺だけに…してください…」
「わかって…いたんだ…。本当は…無一郎の…無は…」
「"無限"の"無"なんだ」
兄は、決して無一郎のことが憎くて「無一郎の"無"は"無能"の"無"だ」などと言っていたわけではなかったのでした。
むしろ逆です。大切な弟を危険な目に遭わせたくないから、弟が変に冒険したりしないようにと願って、そのように言っていたのでした。でも一方で、兄は弟に秘められた無限の可能性にも気づいていたのです。
兄の死後、数年たった時、無一郎ははるかに強い鬼(上弦の鬼)と闘い、命を落としかけます。
しかしその時も、無一郎は兄の言葉(無一郎の"無"は"無限"の"無")を思い出し、見事この鬼を打ち破るという奇跡を起こします。
このお話のポイントは、無限の可能性を秘めているのは無一郎だけではない。私たち一人ひとりがみんな、無一郎なのだということではないでしょうか。
相手の中に(自分自身の中にも)、無限の可能性があることをまず信じられるかどうか。
もちろん人間は弱い生き物です。迷いもするしミスもします。だから相手のすることが(自分のすることも)何でも正しいというわけではありません。
迷いもするしミスもする。経験もまだまだ足りなかったりする。得意不得意もある。いろいろあるんだけれども、一人ひとりの中に、自分も相手もまだ気づいていないような可能性が秘められている。
そのことを(弱さや無知による過ちの可能性を考慮しながらも)前提として考えるか、もしくは「無能な」「無意味な」「かわいそうな保護すべき」存在として考えるかで、全てが変わってきます。
子育てであれば、親が子どもを「無能な」存在だと思っているか、それとも「無限の」存在だと思っているか。親がどう思っているかは、口に出さずとも必ず子どもに伝わります。親がどう思っているか、その影響は子どもにとってとても大きい。
社会制度にしても、ベーシックインカムの話が出てきたりしますが、ベーシックインカムを導入してもうまくいかないのではないかと思っています。
なぜなら、この制度は私たちを「可哀想な保護すべき」存在として扱っているからです。
そして問題の本質はお金ではなく心の問題であるにも関わらず、そこには立ち入ろうとせず、とにかくお金を配ることで、物質的に解決しようとしているからです。
制度自体はもちろん、そのようなことを表立って謳ってはいません。でも仮にベーシックインカムが実現したら、その制度が前提としている「私たちは保護されるべき存在なんだ」という考えが、徐々に私たちの心をむしばんでいくことになるのではないでしょうか。(社会主義の失敗にもつながる話です。)
保護・救済制度を否定しているわけではありません。保護・救済制度は必要です。ただ最初から全員を無力な保護すべき存在として扱うのはいかがなものか、ということです。
親の思いが子に伝わるように、制度の理念もまた、社会の一人ひとりに伝わります。私たち一人ひとりは"無限"の無一郎。そのことを信じ、その無限の力の発揮を促していくような制度にしていかないといけないように思います。
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