文学フリマ香川に出店したのだ
先月末、香川県で開催された文学フリマに出店者として参加してきた。素人ながら見様見真似でちまちまと書いてきた作品をまとめた短編集『破れ目』をたずさえて。
同人誌を作るのも、それを誰かに売るのも初めてのことだった。だから、すべての手順において、本当にこれで合っているのだろうかという不安が尽きなかった。正直今も、本当にあれで合っていたのだろうかという気持ちはある。
それでも、このイベントに参加できてよかったと心から思う。何より、あの瞬間の光景は、たぶん死ぬまで忘れない。
そろそろタバコでも吸いにいこうかと数メートル先の壁をぼーっと眺めていたところ、一人の少女が私のブースの前に来た。学生さんだろうか。
その少女は、うしろにいる親御さんに見守られながら、短編集の見本を手に取ると黙々とページをめくり始めた。やけに真剣な顔をしていた。40ページの冊子、この場で読み切ってしまうんじゃないかという勢いだった。
私の書いた文章を読んで、何を思っているのだろうか。面白いと思ってくれているのだろうか。嫌な気になってはいないだろうか。買ってくれるといいなあ。不安と期待の中で私は静かに結果を待った。
見本を置いた少女は、うしろの親御さんに目配せをしながら「これ」と私の短編集を指さした。買うことを選んでくれたのだ。
その後、親御さんからお金を受け取って、おつりを渡し、お礼以外の言葉は特に交わさずに別れた。
椅子に座って私は泣きそうになった。嬉しすぎて。マジで、心の底から嬉しかった。あんなに若い人が私の本を読んだうえで欲しいと思ってくれたことが何より嬉しかった。嬉しすぎてゲロ吐きそうなくらい嬉しかった(隣のブースに迷惑をかけるので吐かなかった)。二択問題を間違え続けてきた私の人生が、その瞬間、肯定されたような気がした。生きていてよかったと思った。
きっと、この数分のできごとに命を救われることがこれから何度もあると思う。本当にありがとう。
ブースにお越しくださった皆様
短編集を購入いただいた方、無料配布の掌編小説を手にしていただいた方、本当にありがとうございました。生きる力をいただきました。
これからもちまちまとやっていきます。機会があればまたどこかのイベントに出られればと思っています。
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