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オレが身につけてきた教養ってなに?ーーレジー著『ファスト教養』を読んで

レジー著 集英社新書 2022年出版

 Twitterで流れてきて、興味をそそられて購入して読んでみた。

 「ファスト教養」って、いわゆる、ファストファッションの「ファスト」に「教養」という言葉がくっついているわけで、手っ取り早く学べる教養、使い捨て、みたいなニュアンスを含むものでしょ、ぐらいに思って読み始めたんだが、なんか、ほんとに自分のやってきたこととは、かけ離れている現代における「教養」のあり方だと思った。

 著者のレジーさんも、自分もそんなにアンチの立場になり切れないところがあるが、と言いつつこの本を書いているので、だから、私もそこまで、なんなんだ、このファスト教養、って、という気分にはならなかったが、自分が受けてきた教育とか自分がやってきた勉強とは程遠い話過ぎてちょっと私にとって異世界の話だった。

 YouTubeで書籍の紹介している番組やってるのを見ている人とかって、どんな本を読もうか、と参考にするためにYouTube見るんじゃなくて、手っ取り早く、その本に書いてあることを人に紹介してもらって、読んだつもりになるってことなの?確かに、noteの記事も、本の要約だけを書いててなぜかすげーフォロワーがいるアカウントとかあるよな、とか、このネットに広がる世界を改めて見直してみて、ちょっと焦った、私は。

 でも「お金を稼ぐため」のツールとして教養を使う、という考え方で教養というものを身に付いてこなかった私は、まんまと、お金を稼ぐのに苦労してるから、最近の人の「ファスト教養」については何も言えないな、と正直思った。私が身につけてきたことは、まさに「ビジネスに役に立つ教養」とはかけ離れていたのであった。だから、「ファスト教養」についてなんか学べることがあるのかもしれない、と思ったが、結論として、この本を読んでわかったことは、こんなファスト教養は身につけたくても、身に付かん、ということであった。記憶に残らんし、教養といえん、と思ってしまう。というか、それはこの本に書いてあったように、「あの人、売上数字はすごいけど、キルケゴールも知らないんだぜ」なんていう、教養主義者の話が引用されていたが、「目指すべきは「売上数字がすごいうえにキルケゴールも知っている」という状態である。」というレジーさんのいうことはごもっともです。

 ファスト教養と相性がいい危ない思考のことも随所で指摘していたが、なによりも、このファスト教養、安直な差別主義者を生みだす可能性が高い。ヨビノリたくみと中田敦彦の対談で、「今、わからないことは何パーセントくらいあるんですか」「わかっていることが0.001パーセントぐらいだと思います」「え、少ない、もっとわかっているような印象を持っていました」という会話は稚拙すぎて、絶叫。あほすぎる。全能感をもったらやばいですよ。

 でも確かに、今まで言われてきた教養主義者に対して、挑発するような形で、この現代のファスト教養はある。若者もそういう意識はあるだろう。それもSNSやYouTubeなどでフォロワーが増えれば全能感も上がるし。そんな人間にはなりたくない、とは思うけど、じゃあ、ビジネスに役立つ教養は、と問われたらどんだけの人が答えられるんだろ、と自分の経験から思う。私はいまだに解答できないし、やはり人生負け組になりたくない、という人たちの必死感からか、このファスト教養は生まれたように思う。

 とにかく非常に考えさせられる書籍だった。

 若者よ、この本を読みなはれ。


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