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こだわりを捨てることーー『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』を読んで

 コウケンテツ著 ぴあ 2020年出版

 コウケンテツさんが書いたこのエッセイが面白そうだと思っていて、図書館行ったらたまたま本棚に刺さっていたから借りた。

 コウケンテツさんのレシピはたまに出くわすと、作ってみようかな、と思えるものが多くて、彼が食に対してどう思っているのか知ってみたい気がした。

 はじめの方の文章を読むと、子どもが生まれる前は、凝った料理をしたとか書いてあったが、子どもができてからの話の方が割と楽しかった。彼は、子どもの料理教室とかやってるみたいだけど、子どもがどう料理をするか、というのを考えるのがうまいと思った。それは、一つの食に対する向き合い方だと私は思うが、いわゆる食育とも違うし、子どもが食べやすい料理だけを、というのでもなくて、多分、自分が子どもの頃、母親からおいしい料理を食べさせてもらっていて、そのころの記憶を大事にしているからそうなったような気がする。「思い出の母の料理はなんですか」という質問に簡単チゲスープだったという話は、なんだかほっこりしていい話で、簡単なレシピがついているのもよいな、と思った。思い出の母の料理は?って質問、超うっとうしいし、そんなこと聞かれたら、私は答えるのやだけど、そういうのひょうひょうと答えてる男性もだせえな、と思うけど、コウケンテツさん場合は、チゲスープという超時短で作れる簡単な料理でそこから、彼のお母さんの様子もうかがえてなんだか素敵な話だと思った。

 始めは、子どもに愛情のある料理を、といってきたけど、それでは負担になる親が多くて、そうではなくて簡単でいいし、味付けさえやらなくてもいい、という考えや、親同士が集まって、ピクニックするとき、いっぱい料理して用意したのに集まった子どもたちは全然食べない、という話なんかは、とてもなんかコウケンテツさんっぽいような気がして、子育てっていいなと思った話だった。

 一言で言って、「こだわりを捨てることで見えてくることって、意外と多いのかもしれません。」p. 35 ということを、多分この本で、彼は言いたいんじゃないかと思う。

 そして、「今必要とされているのは、ごはん作りを取り巻く環境や、ごはん作りに対する家族の考え方を変えていくことではないか。」といっていたが、そのために彼はいろいろやっているのかもしれない。なんか、最近輝いているもんね。

 外国へ旅行して、いろんな料理を食べてきた彼は、一緒に食事してきたその国の人たちのこともちょこっと書いてあって、なんか日本の家庭料理は、男尊女卑の問題もはらんでいるような、感じもした。料理を作った人に、おいしかったよ、ありがとう、と言葉にして言うのはあたりまえやろ。

 「ただ単にごはんを作るだけでは人は幸せになんて絶対になれない。作っている人だって幸せにならなければ意味がない。」p. 89
 
 世界中の人がそうなってほしい。


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