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したたかな恋心ーー水凪トリ著『しあわせは食べて寝て待て 1』を読んで

水凪トリ著 秋田書店 2021年出版
 
 近所の本屋さんのマンガ売場で物色してたら出会った本。なんか最近マンガデビューした私としては、あんまり恋愛系の話ではなく、このマンガのようなほっこり系のマンガを欲している。

 このマンガは、難病とされる膠原病を抱えた三十代の女性が、団地に引っ越して仕事と日常生活が淡々と描かれている。隣に親切なおばあちゃんが変な若者と一緒に住んでいて、薬膳で体調を整えていくことに、主人公の女性が目覚めていく話。自分が独身だからか、こういう単身の女性の話は読んでいて落ち着くし、最後に健康にまつわるプチ付録みたいなストーリーもついてて、私もやってみようかな、と思った。

 病気を抱えてて、仕事が思うようにいかなくて、でも、結婚してなくて頼る人もいなくて、という話はとても励まされる。私のような一昔前に、負け犬と言われたような人が主人公のストーリーを読むとほっとする。サクセス話ばっかりの時代は終わったんだな、と思った。安野モヨコの『働きマン』が流行った時代は、私もこのマンガ読んでそれなりにバリバリ仕事をして、という風にやる気になったけど、私は全然思うようにいかなくて終わった。私ももう四十代だし、仕事はぼちぼちでよい。今更、タワマンに住めるような大金持ちの独身女性なんか目指していない。

 このマンガも、この始めの一巻目から、隣に住む若者男性にちょっと恋心を抱いている女性の気持ちが描かれている。でもそれが変な脚色もなく女性の小さな恋心の一方的な思いが綴られており、感じが良い。30代の恋心はこのくらいしたたかだと思った。既婚者で子育てしてる同世代の人にはわかんねえよな、こういう気持ち、と思った。

 そして私は、このマンガをお風呂に入りながら読んで、幸せな気持ちになったのでした。


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