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【読書感想】少子化が問題になった小説ーーイ・ヒヨン著『ペイント』を読んで

イ・ヒヨン著 小山内園子訳 イースト・プレス 2021年出版

 図書館に行くと、韓国文学のコーナーをチェックするのか習慣になっている。たいてい新刊は貸し出し中なのだが、珍しくこの本が棚にあったから借りて読んでみた。

 この本は2018年に韓国でものすごく売れて、チャンビ青少年文学賞を受賞したらしい。分類としてヤングアダルトに近い感じがする。あらすじは、近未来が舞台で、子どもが国のセンターに預けられて育っていって、20になるまでに、誰か養子にしたいという人が表れて貰われていけばよいというセンターの中にいる青年たちの様子が書かれている。タイトルになっている「ペイント」という語は、ペアレンツ・インタビューの意で、養子にしたいと思っている夫婦と施設の子どもの面接のことを言う。

 近未来が舞台といっても、マルチウォッチという通信機を持ち、ヘルパーはロボットで、子どもの名前も月の名前と番号であったりするんだが、明らかに、現代社会の少子化の問題がテーマなのだろう。子どもを産まなくなった人たちが増えて、進む少子化。一方で、現代の私たちの社会では、子どもは親を選べないという当たり前のことがあるのだが、この小説に描かれるセンターでは子どもと親のマッチングがされて、青年が養子にしたいと申し出る夫婦をお断りするシーンなどが出てくる。

 私としては、本の扉や、訳者の解説に書かれているこの本の要約をみると、すごく分かりやすい話だと思うんだが、なんか、ちょっと読みにくかった。センターにいる子どもたちの会話が生き生きとしててとても臨場感ある話になっているんだが、読んでいてなんだか状況がつかみにくかった。なんでだろう。韓国文学って現代社会の問題をテーマにしたものが多いが、こういう本が青少年文学賞をとる、って結構明るい未来があるじゃないか、と思ったし、でも、同時に、若者のたちの間でも、すでに出生率が低いという問題意識が働いているのかな、と思った。韓国の出生率は日本よりも低くて、かなり深刻な問題だ。でも、私も40にして子供産んでないけど、子どもを産んで育てるかどうか、って結構人間が生きていくうえで深刻な問題だと私は感じていたんだが、どうなんだろ。周りをみると、普通に家族持って、結婚出産してきた人って、なんでもない普通のこととして、人生歩んできた感があるよな。たぶん、圧倒的多数は、結婚して出産してという当たり前の考え方をするんだろうけど、結婚や出産を選ばない人も増えていくんじゃないかと思った。でもこれは私個人的な最近気にしてるテーマなだけで、こんなことを書いているのであって、たぶん、この小説のテーマは、子どもが親を選ぶというシビアなシーンで思春期にあたる読者が思ってることを登場人物がズバリと言ってくれるというとこに、ポイントがあるように思う。

 十代の読者がこの本読んでどう思うのか聞いてみたい。


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