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【読書感想】自己セラピーとしての占い―鏡リュウジ著『タロットの秘密』を読んで

鏡リュウジ著 講談社現代新書 2017年出版

 占いというものを全く信じてなかったのが、絶望に陥った時、なんかそういう世界もあるんじゃないか、とふと思って、鏡さんが書いたふたご座の本を買って読んでみた。その後、鏡さんをTwitterでフォローしていたら、占いの世界が思ったより疑わしくないのかもしれない、と思うようになった。ユングのことのツイートなどを見ていて、学問的に占星術ってありえるんだな、と思って、鏡さんが書いたこの本を読んでみることにした。

 前半は、タロットの歴史。謎も多いが、思っていたより、深くさかのぼっていて分かっていることも多いんだな、という印象だった。後半は、タロットカードの図像解釈。実際、タロットを始めてみるつもりはないから、さらさらと読んでいたのだが、美術の図像解釈にも似ていて、それでいて、占っている人の自由な解釈も許されるので、とてもおもしろい解釈だった。「ゲームにおける絵札の絵柄として選ばれたのは、タロットが生まれた当時、少し教養がある者なら、誰しも理解できるモチーフだったということである。それらのモチーフは当時大流行していた寓意(アレゴリー)の文法にそって描かれた。」p. 48 と述べられていて、そうか、そういわれてみれば、タロットは、誰もが見て分かるモチーフだったんだな、とハッと思った。精神的に不安定な時は、死神のタロットカードみても刺激があるかも、と述べられていたから、そういうことなんだろう。

 1974年がオカルト元年といわれるらしいが、そこからスピリチュアル的なものが流行する。ユリ・ゲラーのスプーン曲げだったりするわけだが、そのへんから、あやしいものがミックストゥゲザーになって、今日に至っているのではないか。そう考えると、私が生まれたぐらいから、そういうものが流行っていたことが分かる。この年代は現代社会を考えるうえで大いに考察する余地がある。

 鏡さんが最初の方で述べていた言葉にはとても共感する。

 「占いは、自分の状況を冷静に見ながら、偶然に現れるシンボルと突き合わせ、そのときの状況を異なる視点から分析していくツールとしては有効であると思っている。」p. 29

 「タロットのイメージを深く見つめていくことで、自分自身を見つめるツールとして役に立つこともあるだろう。僕自身の立場としては、タロットは単純な吉凶判断の占いである以上に、心理学者ユングのいう、心の深いところから現れる「元型」的イメージとして扱うことで、一種の自己セラピー的な価値もあると感じている。」p.32

 根拠がないところから出たものだが、なにか必然性があると思える。そこから考えていくと不思議と強くなれたりする。そういう力は人間に必要な時もあると思うようになった。


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