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東ドイツに移住していた黒人ーー『マッドジャーマンズ』を読んで

 ビルギット・ヴァイエ著 山口侑紀訳 花伝社 2017年出版

 マンガをめったに読まない私が、珍しく『博論日記』というマンガを買ってみたんだが、その中のチラシに同じ出版社のこのマンガ『マッドジャーマンズ』の紹介があったから、図書館で借りて読んでみた。

 ドイツがまだ西と東に分かれていたころ、たぶん1980年代に、東ドイツがモザンビークから労働者として黒人に移住を募って東ドイツで働かせていた。彼らの労働賃金は東ドイツからモザンビークの政権に直接払われていて結局本人には未払い。彼らが東ドイツで働いている間、モザンビークは内戦がおこり、独立戦争となり、家族を失う。結局、国に帰ってみると、ドイツにいて戦争逃れてたんだろ、と冷たい目で観られたり、故郷というものを失う。そういった人物がインタビューをもとに架空の人物として三人の証言として描かれたマンガ。

 モザンビークの黒人たちが、ドイツですごく大変な肉体労働をした描写が、ほんとうに大変な肉体労働で、来る日も来る日も仕事、読書、睡眠の単調な毎日だった、というのを読んで、私と一緒だ、とすごく共感した。決定的に違うのは、黒人たちは、勉強して大学へ行って知識をつければ、もっと違う仕事ができるはずだと信じているところだ。大学院までいって、その結果こんなに肉体労働してる私ってなんなんだろう、と心底思った。まあ、肉体労働っつっても、公立図書館で、だったけど。もちろん黒人の労働に比べたら、私の労働は全然異なる肉体労働だが、まさか、こんなことで共感するとは思わなかった。

 仕事、睡眠、ばっかり繰り返してると、人間どうにかなってしまう。そこに、読書が挟まっている黒人の生活は、勉強したいという強い願望があって、人って、どんな状況でも知識をつけたいという欲があって、それは生きる希望に繋がる。

 それが黒人と私の共通点かもしれない。


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