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オノマトペの謎ーー今井むつみ 秋田喜美著『言語の本質』を読んで

 今井むつみ 秋田喜美著 中公新書 2023年出版

 出版されてからすぐに新聞で取り上げられていたり、いろいろ話題になっていたので、即購入した。千葉雅也さんが著者とトークするという話だったので、早く読んでから参加しようと思っていたが、結局だいぶ経ってから、読了した。

 この本、おもしろそうだな、と思ったけど、読んでいてちょっと違和感を感じた。従来の言語学、心理学、応用言語学、認知言語学とかと比べると、いろんな向きの話がごった返しているような感じで、これでいいんだろうか、とちょっと疑問に思った。

 特にオノマトペの話は、よく研究されていて、こういう本、今までなかったな、と思って、嬉しかったんだが、どこか著者の思い込みのように受け取ることができる表現もあって、私は、再度、オノマトペってどういう効果がある言葉なんだろう、と考えてしまった。

 私が今までいろいろ読んできたなかでは、オノマトペには恣意的な意味はないという理解を私はしている。著者は「オノマトペは音から意味がわかってしまう」といっているがそれはありえないと思う。例えば、韓国語にもオノマトペが多いらしいが、それを日本人が聞いても、なんのことだか全然予想がつかないらしい。それはごく当たり前のことだと私は思っていて、例えば、「ペラペラ」と聞いて、「紙が薄い」とか「言語が流暢だ」とかいう意味は、日本語話者じゃない人は、なかなかイメージわかないだろ、と思う。今井さんの研究では、日本語話者の子どもにこういうと、なんとなく伝わる、という表現があって、そこは私は理解しかねた。

 この著者がしばしば使う「言語の身体性」の意味が私にはよく理解できない。確かに、オノマトペは、身体性がある言葉だと思う。彼女が言っているのは「言語が持ってる身体性」ということなんだろか。それなら分かる気がするが、この著者のオノマトペの捉え方は私とは少し違うように感じた。

 「アブダクション」という言葉も出てくるのだが、それもフランス思想を研究していた私とは結構違う感覚で、この言葉が使われているように思った。これも説明不足のような気がしたが、それと同様にこの本のタイトルである「言語の本質」という言葉も結構危うい言葉である。本質…って。実存は本質に先立つというが、言語の本質って、どういうところを指しているのかこの本を読んでも分からなかった。

なんか、最近こういう本が多い。
こういうところ、もっと説明してほしい、と思うこと多い。
私が言葉にこだわりすぎているのだろうか。多分、研究書のあり方が変わってきているんだと思う。


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