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【読書感想】ファッションはカルチャーであるー栗野宏文著『モード後の世界』を読んで

栗野宏文著 扶桑社 2020年出版

 図書館の棚に刺さっていたから読んでみた。割と最近出版された本のようだ。

 ユナイテッドアローズの創業者の一人である栗野宏文さんによる、社会潮流やファッションにまつわるエッセイ。この本を読むまで彼のことは知らなかったが、今まで読んだファッション関係の本の中でも、広範囲に渡っていろんなことについて書かれたとてもよいエッセイで、読んでよかったと思った。

 「今の時代に最も重要と感じているキイワード」として「サステナビリティ、個の時代、西洋的価値観の行き詰まり」と三つあげていたが、それはまさに的確だな、と思った。特に西洋的価値観の行き詰まりは、どの分野にも通じてて、やはりファッションというものを述べるとき、それが「現代」をすべて語っているように感じるからおもしろいと思う。

 「ファッションにおける日本の特性は階級がない、セクシャル・セダクションがない、つまりファッションとは創造性と真摯なものづくりで成立し得る自由なもの」p. 186という日本の特性はこれからも世界を魅了するだろうと思う。そのうえで、栗野さんはこのエッセイの後半で、アフリカの可能性を述べる。アフリカの製品を売ること、無償ではなく仕事だ、というところにはしびれた。こういうコネクションが広がっていけばよいと思った。

 「ファッションはカルチャーである。」という言葉は、要するに私がファッションについて興味があるのは自分もこう考えているからかもしれないと思った。国だけでなく、着てる人個人個人が持っている文化なんだと思う。デザイナーや売る人、ファッションひとつに関わってるいろんな人が作り上げるカルチャー。そう考えると、やはりワクワクする。

 年配の人向けのお店づくりをしたけど、失敗に終わったと書かれていたけど、実際、ユナイテッドアローズって結構年配の人も買うよな、と思った。娘に連れられて買う、という話を私はしばしば聞く。たぶん、栗野さんの年配の人もファッションを楽しむという思想は十分ユナイテッドアローズの店舗で伝わっているように感じる。

 この本は、あまり普段聞けないようなファッション業界の人の話で、聞いていて、ふむふむと親しい人から詳しい話を聴いているような気分になった。


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