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安いけどおいしいと思うイタリアーー『貧乏ピッツァ』を読んで

 ヤマザキマリ著 新潮新書 2023年出版

 近所の本屋さんをぶらぶら歩いてたら、この本に出会った。

 表紙が愛らしくて、ヤマザキマリさんのエッセイなら絶対おもしろいだろうな、と思って、購入してみた。

 料理とか食べ物についていろいろな文章を読んでいるのだが、いざ自分が書くとなると、いまいち納得できる文章が書けなくて、どういうのがおもしろいんだろ、と探究しているんだが、このヤマザキマリさんの本は、それにひとつの回答を与えてくれるような本だった。

 イタリア人の旦那さんと結婚して、イタリアに住む相手の両親との異文化交流の話は、とてもネタになりまくりなので、日本語にして日本人の読者に伝える必要がある。それが、彼女の場合はとてもうまくいってて、マンガにしろこういう本にしろ、とても書き方がうまくて読みやすい。

 イタリア人と結婚しておいて、トマトが苦手とはなにごと?と思ったが、ヤマザキさんが紹介する料理はとてもおいしそうで、日本向けにイタリアのお手頃で簡単な料理を紹介する料理番組をやっていたというのは、とてもおもしろそうだと思った。結局、外国の料理って、地元で食べられている料理をその土地で味わうのが一番おいしいと思うのだが、そういう料理は日本に入ってくると日本向けに変えられてしまうので、こういう特別でない料理を紹介する番組はもっと日本でやってみるべきだ。

「世界で食べてきた忘れ難きサンドウィッチ」の紹介は格別にうまそうなものばかりだったので、ここに転記する。
①フィレンツェの「ランプレドット」と「豚の丸焼きのスライスポルチーニ茸の油漬け」のパニーノ
②シリアで毎日のように食べていた「シャワルマ(ドネルケバブ)」サンド③シリアで食べていたひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」のピタパン挟み④ポルトガルのイワシの炭焼きのパン挟み、
⑤ブラジルで食べた「フランセジーニャ」というハムを挟んだサンドウィッチの上にチーズをかけて焼いたもの
⑥キューバで夜遊びの後に食べる「メディアノーチェ(真夜中)」という具だくさんのサンドウィッチ

よくそのサンドウィッチの名前を覚えていたな、と思う。

 イタリア料理としては、トスカーナの塩気のないパンについて書かれていた項目で、硬くなったパンを細かくちぎって、ぶつ切りにしたトマトやスライスした玉ねぎ、キュウリの輪切り、オリーブとケッパーを混ぜて、ヴァージンオイルで和える。というもの。パセリやバジリコ、ペコリーノチーズもまぜるとおいしいそうである。

 他にも小ネタがいろいろあって、「日本のモンブランが黄色いのは栗きんとんをアレンジしたペーストだからだそう。」とか読んでいて、単に食材の違いだけでなく、食べ物を通して、普段見えないその国の様子が見えてくるようなエッセイだった。


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