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『ユマニチュード入門』を読んで

本田美和子 イヴ・ジネスト ロゼット・マレスコッティ 医学書院 2014年出版

 細馬宏通さんの本に紹介されていて、よさそうだから読んでみた。

 まず、この本のタイトルになっている「ユマニチュード」という言葉だ。フランス文学科出身の私はこの言葉に引っかかったのだが、やはり、エメ・セゼールの「ネグリチュード」という言葉が起源になっているようだ。そこからスイス人作家により、「人間らしくある」という状況を「ユマニチュード」と命名したらしい。

 ユマニチュードの基本となることは1,見つめること 2,話しかけること 3,触れること 4,立つこと。患者の可能性を引き出すことができるケア技法をいう。イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティによって、広げられた。

 この本は、その技法を分かりやすくイラスト入りで、簡単に述べられている。日本人の本田美和子さんのケーススタディも紹介されていて、実践的な現場にいる人は、実体験に迫って理解しやすいと思う。

 介護とか考えたことがなかった私は、まず、この本の始めに写真入りの介護の現状に驚いた。お風呂に入るのがいやで拒む老人を、拘束して入浴させている写真である。もし親が今後、ケアが必要になった時、介護施設に入れて、こんな対応されてたら、と思うと寒気がした。こんなに介護の現場がひどいのかと思った。ユマニチュードの実践はまず、触れるにも、手首を持ってはいけない、とある。また、飛行機が離着陸するように、スムーズに相手に触れるとよい、とも、書いてあって、日ごろ意識しなかった、相手との触れ合いの仕方の参考になった。ケアが終わった後も、次回はいつですね、と再会の予約をとったりすることで、その後の関係がスムーズにいく。時間がない、忙しい、といった理由で、ゆっくり話せなかったりするが、総合的にみると、声かけして良い関係を作っていた方が、拒否が減り、よい思い出が残り、次につながる、というのは、誰にとっても人間関係を築く上でいえることだな、と思った。

 「ユマニチュードの理念は絆です。人間は相手がいなければ存在できません。」とあるように、ケアというものが、相手と自分のあいだにあるものだということがよくわかる。また、「ユマニチュードは「人と人との関係性」に着目したケアの技法です」とあるように、まさに、相手にしてあげること、というよりも、お互いが良い関係で日ごろのケアができることが、目的とされている。

 介護のお仕事はほんとに時間がなくてとても忙しいと思うが、みな、この本を読んでおくべきだと思った。


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