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『ヒップ』を読んで

ジョン・リーランド著 篠儀直子 松井領明訳 p-vine books 2010年出版

 なんかの本読んでたら、参考文献に取り上げられていて、面白そうだから読んでみた。すっげー長かった。およそ580ページ。

 セロニアス・モンク、チャーリー・パーカーといったジャズマンを始め、ラッパーのエミネム、ヒップホップの人たち、また、ビートジェネレーションのケルアックはもちろん、ソローの『森の生活』まで出てくる。あらゆる人たちが、雑多に取り上げられてて、時系列ではなくトピックごとにいろんな人が挙げられる。また、ミンストレルショウや、MTVやカトゥーンのことや、ドラッグのことなども取り上げられてて、かなり守備範囲が広い。要するに、ヒップHIPとはなにか、を追求しているのだが、私はこの本を読んで、アメリカの歴史にヒップという言葉は刻まれるべきだと思った。

 そもそもヒップという言葉だが、これは諸説あり、「1619年を起点としてアフリカ人とヨーロッパ人とが初めて土地で出会い、自分たちをアメリカ人として作り始めた年」と作者はしており、言葉の出どころはウォロフ族の奴隷たちによってもたらされた語だとしている。なにがヒップなんだかわかんないな、とかなんとなく感覚的にヒップと現在呼ばれるものが、580ページに渡り、延々と書かれいるのだが、そのはじめにソローの『森の生活』という本が取り上げられてて、彼のような生活を良いとするような考え方はまさにヒップとある。ケルアックは分かる。『オン・ザ・ロード』が爆発的にヒットし、その長い歴史の中で、誰もが、アメリカと言ったら、この本と言うように、アメリカのドラッグと彷徨う若者が見事に描かれている。ドラッグまみれの歴史もちゃんと書いてあって、裏のアメリカ史を知ることができる。また、フェミニズム問題も取り上げており、いわゆる家父長制のビートジェネレーションだったが、パティ・スミスがいたり、ミッシー・エリオットがいたりと、女性たちのヒップスターも数多く生み出したそう。ちなみに、パティ・スミスは若いころフェミニズム運動には反対していたらしい。

 580ページを全部ちゃんと読んだ割には、この文章書いてて、人名をあげる方がヒップがなんぞやとなんとなくイメージがつきやすいな、と思った。

 ジャズに興味がある人はもちろん、ビートジェネレーションを研究している人はぜひ読んでおくとよいと思うし、アメリカ現代史といったら、この本をあげるのは正解だと思う。数少ない資料しかない裏のアメリカ史なので、貴重な本だと思った。


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