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【読書感想】図書館の歴史ーー高山正也著『図書館の日本文化史』を読んで

高山正也著 ちくま新書 2022年出版

 小さいときから図書館のヘビーユーザーで、図書館でバイトをしたこともあり、バイトから契約社員にならないか、と声がかかったりしてきた私としては、なんとなく図書館そのものにまつわる研究書とか読んでこなかったな、と思って、今回この新書のタイトル見て借りることにした。

 図書館と言っても、文字の歴史から始まり、いつごろから本というものが作られて文庫というものができたか、という話から始まっていて、かなり深い話になっている。始めの方は、日本史が弱い私としては結構読むのが辛かったが、戦後ぐらいの歴史からはとても身近に感じるものだった。日本の本というものができたところからの歴史ではあったが、図書館というものになったのは、戦後のアメリカからの影響が強いのは事実だ。

 でも、「金沢文庫」っていう名が出てきたときは驚いた。京浜急行をずっと利用していた私としては、金沢文庫という駅名があまりにも身近だったが、その由来を知らなかった。金沢文庫ってなんなんだろ、と思っていた。図書館の歴史とか知っている人にとっては、輝かしい名前だったんだな、と思った。

 この本を読んで、一番へえーと思ったことは図書館学と言ったら慶応義塾大学だそうだ。この本の著者も慶応の名誉教授でいらっしゃるが、1951年に図書館学科が設立され、「日本図書館学校」と呼ばれていたらしい。

 図書館が無料貸本屋になってしまうと、司書の専門性は必要ない、そうなってはならない、という話が繰り返し書かかれている。私は公立図書館で働いていて、結構市民は、無料貸し出し本と思って借りに来ているな、と思う節はあった。新刊を予約しようと必死になる利用者。横浜市なんて、市民の人口一人当たりに対して所有している本が最も少ない、といわれている市だから、本当に、新刊本の予約待ちなんて、何百人もいることが普通だし、そんなだからまず、棚に新刊の本がないということが起きる。本の返却と貸し出しの手続きに日々追われながら、最低賃金でバイトしている身の私としては、いつも、公立図書館の役目ってなんだろう、と考えていた。そのへんをもうちょっと突っ込んで議論してる書物を読んでみたいと思った。

 あと私が興味を持っている、指定管理者制度については、この本の著者はそんな否定的な意見は書かれていなかった。指定管理者制度を導入することによって、司書の専門性が維持できなくなったのではないんだろうか、とちょっと私は思うんだが。

 やはり、アカデミックな領域で活躍している人は、話の中心が大学図書館であるのは否めない。もうちょっと一般的な市民の問題としての図書館のあり方を私としては考えていきたいと思った。


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