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【読書感想】『ドイツの自然療法』という本を読んで

森貴史著 平凡社新書 2021年出版

 母親が購入して興味がありそうだから、と私にくれた本。

 まず、現代医学の常識を取っ払わないと、ここに書いてあることはみんな、なんなんだろうな、と思って終わってしまうように思う。私は、現代医学では治らない病気もちょっとした自然療法でなんとか治ってしまうケースがあると思っているから、読んでみた。漢方や栄養学などもそうだが、治らないと思っていたアトピーが、アレルギーが、慢性的な痛みが治った、など場合によってはあり得ると思っているから、こういう療法もあるんじゃないかと思った。

 ここで取り上げられているのは、ドイツの自然療法で水治療、断食、サナトリウムなどのことを、1800年代の歴史から様々な人物を通して語られている。ドイツの自然療法はすごく歴史のあることで現在でも、街中で自然療法診療所があるらしい。バスソルトで有名なクナイプ社、コーンフレークでの大会社ケロッグ、今はヨガと一緒に流行っているピラティス、朝食で食べられるようになったミューズリー、など、全部、自然療法から来ているものらしい。驚いた。クナイプはドイツで町あげてのクナイプ修道院ホテルなど観光スポットとなっているらしく、一度行ってみたいな、と思った。

 読んでいて、自然療法に歴史があるのは分かるが、ちょっと話が古すぎるようにも感じて、現代に応用性はあるのだろうか、と疑問に思うこともあった。ただ、日本の現代医学って自然療法について全く理解がないというか、完全に切り離されすぎているようにも感じる。ドイツでも、自然療法医を学校医学の医者たちが一斉に訴えるといったこともあったらしいが、でも、現在でも支持者がいるのは事実だ。ヒトラーが自然療法を科学的根拠に結びつけて検証する、ということをやったそうだが、その成果はどうだったのか、記述はなかった。

 私としては、現代医学にちょっと疑問を持っているので、こういう自然療法の方が人間的なようにも思う。例えば、糖尿病患者にインスリンを使うのはこの本で述べられている時代から採用されたことで、それは自然療法でも確かに効果があることだ、と考えられたそうだが、糖尿病は、生活習慣病のようなところもあるから、こういった自然療法も、効果が出るのは私は信じる。

 著者が、文化共生論学専攻の教授ということもあって、歴史的な文化論がしっかり述べられていて、どうして、ドイツで自然療法が盛んなのか、知るには良い本だと思う。


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