見出し画像

【読書感想】喉からウサギ出てくるーーコルタサル著『奪われた家/天国の扉』を読んで

コルタサル著 寺尾隆吉訳 光文社古典新訳文庫 2018年出版

 なんとなく、図書館で借りれる冊数が余った時は、光文社古典新訳文庫を手に取る。

 アルゼンチンの作家らしい。でも、ベルギーで生まれ、ブエノスアイレスにいて、最後はパリにいたらしい。

 ラテンアメリカ文学って物珍しさでたまに手にするんだけど、ほんとに、流行ったことがないというか、読まれてないのを感じる。ボルヘスとならぶアルゼンチン幻想文学の代表的作家、とかいてあったが、私は知らなかった。ガブリエル・ガルシア・マルケスとかもいて、いわゆる「ラテンアメリカ文学」のブームもあったらしいが、私にはちょっと遠い。

 幻想文学というか、ちょっとファンタジーぽく、非現実的でシュルに近いようなとこもあり、そういう「なんだこれ」と意外に感じる短篇は面白かった。たとえば、喉からウサギが出てくる話とか。なぜか、妙に、「ウサギ」というところが納得できて、ふさふさで白くて、小っちゃいのが喉に引っかかっている、というのが、この世で一番正しいことを言っているような気がした。

 「天国の扉」という短篇は、ちょっとラテンアメリカっぽい。男と女がバーで踊っている様子が書かれているんだが、こういう雰囲気が漂っている小説ってあんまり今まで読んだことないな、という感触を得た。登場人物の肌の色や汗のにおいなどが伝わってくる短編でした。

 最後の解説読んでたら、「ペロン政権の嫌悪感に読める短篇も少なくない」って書かれていたけど、ラテンアメリカ系の小説ってそう政治的な話と関係づけられて読まれることが多い気がした。なぜだろう。この小説のなになには当時の独裁政権のなんとかを表してて、この描写は追いやられる人々を表している、とか。なんかこういう解釈が多い気がする。もうちょっといろいろ読んでみようと思った。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?