見出し画像

息子と母親という関係ーーリリー・フランキー著『東京タワー』を読んで

 リリー・フランキー著 新潮文庫 2010年出版

 リリー・フランキーの2005年に出版されて話題になった小説。その時、私はちょうど本屋さんで働いてて、レジでこの本と同じ『東京タワー』というタイトルの江國かおりが出てたのがずっと記憶に残っている。入院した時、病院の本棚にあったので読んでみた。

 良くかけた小説だと思った。自伝的小説。こういう小説って、どこまで本当か、と思うが、そりゃ細かいことは創作してるだろうな、とは思うが、細かいところが逆にリアリティがあって、そういうのはほんとにそうだったんだろうな、と思った。記憶として残っているんだろうな、というか、本人にとってはそれが事実だろうがうそだろうかは重要でなくて、書くことによって、リアリティが生まれていて、読者の私としては、それはそうだったんだろうな、と思ってしまう、ということ。

 この本の感想文を書いてる2024年の今では、リリー・フランキーのことは「万引き家族」のお父さん役だった人ぐらいしか思い当たらないが、この人は年取ってから俳優でもやっているの人なのか、と思った。このくらい年取ってから小説書いたり、俳優やったりしたら、それなりに人生楽しいだろうな、と思う。割とこの人って、マルチタレントというよりも、年を重ねることによって、かっこよくなっていく男性のような気がした。

 でも、息子と母の関係性のテーマは根深いというか、マザコン的なところがあるのは否めん。マザコンというか母を想う気持ちがずっと根に深くあって、ずっとそれが消化できていないようなところがあって、だから小説を書いたり、歌を歌ったりして、その気持ちを清算しようとしているように思う。それが割と良い作品として、世に認められる、という流れがこういうダメ男のような役を演じれるような人にはあるような気がした。この本を出版したのはだいぶ前で、「万引き家族」の映画で役を演じたのはそれよりずっと後だけどね。

 私は娘の立場だからよくわかんないけど、息子と母の関係は簡単そうで難しそうだ。ただのマザコンと言ってしまえばそれで全て説明できるような気が、女性である私は思う。女性である私からすれば、息子と母親との関係は、消化できていない、あるいは清算できていない、の二択なんじゃん、と言いたい気持ちもあるが、そこまで複雑でもない。娘と母親との関係のほうが複雑なんじゃんという気もなく。娘は母親になれば、男性の気持ちが分かるんじゃん、というつもりもなく。それと同様に、男性も父親になればなにか分かるんじゃん、というふうに言うつもりもない。子どもを産むということがもう念頭にない私としては、こんな親に執着する論争がばかばかしく感じて、私は一生子どもの立場を考えて、生きていきたいと思った。

 そんなことを考えさせられた本でした。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,615件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?