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時代性のあるものーールナール著『にんじん』を読んで

 ルナール著 中条省平訳 光文社古典新訳文庫 2017年出版

 Twitterでこの本は虐待が書かれているという人がいたから、なんとなく読んでみようと思って読んだ。

 にんじんが動物を殺す描写なんかが残酷だな、と思ったけど、この残酷さは時代が昔だったらそんなにおかしいことじゃないんじゃないかな、と思った。今の時代に生きていて、この小説をよんだら、残酷だ、と思う人もいるのかもしれないとは思うが、そういう解釈する読者って結構多いのかもしれない。私は、ただ単に、この小説が、子どもに対する虐待ってどういうことなのかなと思って読んだけど、結局理解できなかった。

 父親と手紙のやりとりをするとこがあるんだけど、その往復書簡なんて、とても面白かった。父親の、全然子どもの気持ちを与さないで、返事書いてるとことかなんか笑えた。この著者は割とユーモアか皮肉を込めて書いているのかもしれない、と思ったけど、父権的なものに時代性ってあるのかなと思った。私が女性なので、もし、この『にんじん』の作者が女性だったら、現代とどんな共通性があるのだろうか、と考えるが、ネットで調べてみたら、このルナールという作家は男性だったので、この父親との往復書簡の描写を入れたのは彼の作品にとってどういう作用を及ぼしているんだろうか、という方向で考えてみたいと思った。まあでも、作品と作者は切り離して考えるのが現代において、するべき文学研究だと思います。私は。

 光文社古典新訳文庫の翻訳を多く手掛ける翻訳者さんたちは、どういう人たちなんだろう、と思った。今まで読んできたアメリカ文学を翻訳している人に比べると、なんか個性がないし、でも、いろいろ翻訳やってんだけど、どうせだったら、もっと翻訳者さんたち自身で面白い現代文学選んで訳せよ、ってちょっと思う。光文社古典新訳文庫はどうなっているんだろね。それでも、私は自分の教養のために光文社古典新訳文庫を読むけど。

 新しい翻訳を新しい世代の人に託して出版していくことは大事だと思います。


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