Closed memories 2
「なにそれ。ホラーじゃん。」
開口一番、今ふみが一番聞きたくないワードを言い放った。
ランチの時ちょっとだけ電話できない?
とメールをしておいた千晶。彼女くらいしか、このメールの不可解さがわかる人はいない。
小学校からの同級生である千晶は、ふみが知る限りメールの差出人との記憶を共有している唯一の人物だ。
元よりほかに、こんな相談ができる相手もいないのだが。
「ちょっと~それホントやめてよ。冗談じゃないんだから。」
「もしくは、普通にストーカーの仕業でしょ。心当たりは?」
「あるわけないよ。それにペンダント切れたことなんて絶対誰も知らないんだよ。家で切れたんだから。」
一呼吸おいて放たれた言葉は最悪だった。
「…監視カメラ?」
「…千晶ってば!!」
思わず電話に向かって叫んでしまう。これ以上千晶と話していると家に帰れなくなってしまいそうだ。
「そう怒んないでよ。冷静に可能性を考えてるだけじゃん。にしてもなぁ~メール消しちゃったのは痛いなぁ。」
あまりの気味の悪さに、切れたペンダントを見た直後反射的にメールを削除してしまったのだ。
そのあとも削除したはずのメールが戻ってきてるんじゃないかというホラーめいた想像をどうしてもぬぐい切れず、何度も受信フォルダーをスクロールして確かめては、安堵を繰り返していた。
「まぁ、そうなんだけど…。とりあえずでも、最近同窓会したとかはないんだよね?」
「ないね~。ていうか小6の同級生であんたのメルアド知ってんのあたしぐらいのもんじゃん。あ、まさかあたしを疑ってんじゃないでしょうね?」
「え、いやいや、そんなまさか…。」
ふと、そこで沈黙が流れた。
「あれ、ごめんホントにそんなこと思ってないよ?」
「…いや、違うんだ。なんか変だなと思って。」
いつになく千晶の声が真剣に響いた。
「今時メールよりみんなSNSでつながってるしね、って言おうと思ったんだけど、あたしもだ。」
「え?」
「小6の同級生、誰ともつながってない。おな小はいるのに、6-3の人だけ誰ともつながってない。」
それに、小6の同窓会って、やった記憶ある?
最後の千晶の言葉が、電話じゃなくてどこか、とても遠くから聞こえているような気がした。
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