翻訳者による一筆書きの読書感想文

ミッション:主にアメリカの黒人文学を紹介して、ブラック・カルチャーの豊かさを1人でも多くの人に知ってもらう!

ゴール:黒人作家の翻訳作品でヒットを出す! 黒人作家のアンソロジーを編纂/翻訳する!

まずは自己紹介

こんにちは~! ワシントンDC在住の翻訳者、押野素子です! 翻訳者と名乗ってはいても、なんせメインでやっている作品がマニアックなものばかりなので(ベストセラー待ってるよ!♪←魂の叫び)、昼間は特許事務員(小室さんのおかげでホットワードになった、パラリーガルってやつね♪)として生活費を稼いでいます。

ワシントンDCはゴーゴー・ミュージック発祥の地!いまだによくかかってます。

歴史的黒人大学で知られるハワード大学に留学し、卒業後に日本に帰国して出版翻訳を始め、これまでに出版した訳書/著書は40冊ほど。出版翻訳をやる前は、歌詞対訳やアーティストのインタヴュー代行(ライターさんの質問票に従ってアーティストにインタヴューし、それを起こして日本語に訳す仕事)などをやっていました。かなりの数をこなしたと思いますが、ザル脳(脳みそに知識や思い出を入れても、ザルのようにすべて出て行ってしまう)のため、下ネタ以外は全然覚えていない! 手元にほとんど原稿もCDも残っていないので、履歴書には「いろいろやった」としか書けません(実績にならねえ……)。それから、bmrというブラック・ミュージックの専門誌でライターもやっていました。もう何を書いたのかも覚えていないけれど……

訳書/著書のリストはこちら→https://www.motokooshino.com/ 

なぜ黒人文学なのか?

恥ずかしながら、中学生以降はまともに本を読んでいませんでした。日本文学も海外文学も自分にはピンと来るものがなかった、文学よりも音楽に強く惹かれていた、という単純な理由です。そんな私を変えたのが、クロード・ブラウンという黒人男性の自伝『ハーレムに生まれて―ある黒人青年の手記(Manchild in the Promised Land)』(サイマル出版会刊/小松達也訳)。兄の部屋に忍び込み、CDや本を物色していた時(←下の子あるある)に、たまたま見つけた1冊です。何の予備知識もなく読み始めましたが、あまりの面白さにページをめくる手が止まらず、徹夜で読了! 本を読んで、音楽と同じような興奮を味わうのは初めてのことでした。

私の人生を狂わせた(?)Manchild in the Promised Landの原書。表紙がクール!

そしてその直後、ひやかしで入った洋書店でラングストン・ヒューズの『ミスター・シンプル(Mr. Simple)』シリーズの1冊をたまたま見つけ、これまた予備知識なく読み始めたら、ド・ハ・マ・リ(←ウィスパー・ヴォイス)……ハーレムに住む労働者階級のミスター・シンプルと、大学卒のライター「私」による丁々発止の酒場談義。この2冊を読んだことで、それまではブラック・ミュージック一辺倒だった私の関心が、黒人文学にも広がったのです。

ラングストン・ヒューズのMr. Simpleシリーズは、いつか日本版を出したい。

黒人文学の何が魅力なのか? あくまで個人的な印象ですが、文章に音楽のようなリズムがあるものが多く、音楽を聴くように本を読める、というのがひとつ。私が最初に読んだ2冊が特にそうだったのですが、どちらもストレートな表現で「喋るように書く」スタイルでした。小難しくない。気取っていない。高尚ぶっていない。頭でこねくり回すのではなく、ハートで感じられる文章。私が読書に対して持っていた苦手意識は、この2冊で見事に払拭されました。余談ですが、YA/児童書の分野で大活躍のジェイソン・レノルズは、17歳になるまで本を1冊読み切ったことがなかったと語っています。だからこそ、本を読まない子どもたちの気持ちを理解し、そんな子どもたちが最後まで読めるよう、ライムのような形式や、読者に語りかけるようなカジュアルな文体で執筆しているそうです。

もうひとつの魅力は、うまく説明できないのですが、さまざまな苦難や不条理を知ったうえでの明るさや優しさ、人間としての胆力、コミュニティの包容力といったものを作品から感じるところ……弱音を吐いてばかりの自分は、彼らの作品を読んでいると、励まされたり、気合入ったりすることが多い! 以前足を運んだタナハシ・コーツの「ウォーターダンサー(The Water Dancer)」(新潮社刊/上岡伸雄訳)の出版記念トーク・イヴェントで、「ブラック・ピープルのスーパーパワーはJOYだ」という話が出てきたのですが、おそらく私は彼らのJOYの部分に強く惹かれているのだと思います。なお、JOYの類義語にはHAPPINESSがありますが、後者が対外的な事柄に対する反応としての感情であるのに対し、前者は周りの状況を問わず(困難な状況であっても)、常に心の奥底で感じられる喜び、といったニュアンスがあるようです。

まさにBlack Joyをテーマにした本も出版されています(2022年刊)。

英語とは無縁の家庭で生まれた私が、ブラック・ミュージックや黒人文学にハマって黒人大学に留学してしまったことを考えると、このジャンルの作家/作品を知ったら、魅力を感じてくれる人がもしかしたら他にもいるかもしれない……という思いから、自分が読んだ本を紹介していこうと決意するに至りました。狭いようでいて広い日本、自分のようなスキモノだって、きっとどこかにいるはずだと信じて……なお、メインは「黒人文学」ですが、備忘録も兼ねて他のジャンルの本や、好きな音楽や映画なども紹介していく気がします。(記録しておかないと、読んだことすら忘れそうだし……)
 
なぜ「一筆書き」なのか?

先述のとおり、私はパラリーガルとして日銭を稼ぎながら翻訳業を営んでいるため(パトロンは常時募集中。注:英語の意味でのパトロンです)、なかなかまとまった時間が取れません。きちんと文章を書くのは時間と労力がかかるため、これまで読んだ本の感想はツイッター(アカウント名は@moraculous)に書き殴っていたのですが、ツイッターだと一瞬で流れてしまう&二度を見返すことがないので、ブログに記すことにしました。ただし最優先事項は「時短」! 文章は一発勝負の一筆書き方式でいきます。文章は不完全でもいい。たぶん箇条書きで感想を綴る感じ。それでも何も書かないよりはマシ! そんな心意気でやれたらいいなと思っています。(中年になって実感する、続けることの大切さよ……)また、徒然なるままの一筆書きなので、論理が破綻したり、自分語りに終始したりすることもあると思うので、そこは大目に見てくれると嬉しいです。更新は不定期。気ままにやります。

みなさんへ

(編集者のかた)翻訳やリーディング、海外エージェント/著者へのコンタクト、取材コーディネートや著者インタヴュー代行など、守備範囲は結構広いので(レコード会社勤務時代は海外渉外と国内宣伝、出版エージェント勤務時代は契約書を担当)、お気軽にお問合せください。
(翻訳者のかた)「同業者同士、励まし合いたい!」、「このフレーズのニュアンス、現地ではどんな感じ?」と思ったら、ご連絡ください。私に分かることなら協力いたします。
(本好きなかた)「この本、面白かったよ!」という推薦や、「この本は読んだ? 読んでみて感想きかせて!」なんてリクエストも大歓迎です。
https://www.motokooshino.com/contact

あと100冊くらいは訳したい!


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