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コラム(23日)、長期金利1%で動揺する日本、「金利のある世界」への移行期特有の反応か

長期金利の指標となっている10年国債の利回りがきのう、一時的に1%を超えた。これを受けてマーケットは「先行きの金利上昇懸念が強まっている」と過剰反応している。21日付けの当欄「『金利のある世界』、構造改革が当たり前の世界に」でも触れたが、「金利のある世界」が普通で、黒田前日銀総裁が推進した「黒田バズーカ」によるゼロ金利の深掘り、いわゆる「異次元緩和」の方が異常なのである。とはいえ、異常が長引いた結果、日本人の多くは異常が「普通」で金利のある普通の世界を「異常」と感じてしまう。だから10年国債の利回りが1%をつけた途端に市場関係者の心理が、「金利の先高懸念」一色になる。1年前に黒田総裁のあとを受けて総裁に就任した植田氏は、この間、着々と「金利のある世界」への復帰を目指して準備してきた。総裁が準備したというより、インフレの持続的な進行という実態経済の動きが長期金利の上昇を後押したのであり、日銀はそれに対応した金融政策に移行しつつある。

日経新聞は1%乗せの背景を次のように分析する。「長期金利を押し上げたのは日銀が追加の金融政策修正に動くという市場の思惑だ。日銀は24年3月にマイナス金利の解除など政策修正をおこなった。ただ、その後も円安が止まらず、円安による物価押し上げをとどめるために日銀が早期に追加の利上げや国債買い入れの減額に動くとの見方が強まっている」。そうではない。日銀の対応はプロセスに過ぎない。1%乗せの根源は物価上昇だ。円安と言い換えてもいい。これが合理的期待形成に基づいた市場心理を動かしている。きっかけは「財務省が22日昼に実施した40年物国債入札。生命保険会社など償還年限が長い国債を欲する投資家の需要が想定よりも集まらない『弱め』の結果となったことで、需給の緩みを意識した債券売りが出て0.98%前後で推移していた長期金利は午後2時過ぎに1%に達した」(日経新聞)。国債の利回りは1%に乗せるべくして載せたのである。

はてさて、問題はここから先だ。金利が上昇すれば日本経済はデフレに逆戻りするのだろうか。岸田政権はいまだに「デフレ脱却」宣言ができないまま、財政赤字拡大懸念を強めている。裏金づくりの対応に追われて財政に関する発言は目立たないが、いまだに「増税メガネ」を外した様子はない。「金利のある世界」に戻ると本当に財政赤字は増えるのだろうか。「ゼロ金利」にも「金利のある世界」にもプラス、マイナスさまざまな要素が潜在している。だから、どっちが良いとか悪いというつもりはない。はっきりしていることは金利が上がればゾンビ企業は生き残れなくなる。結果的に企業倒産は増えるだろう。半面、タンス預金だった資金は動き出す。マネーの動きが活発になれば、さまざまな投資機会が増える。投資機会が増えればビジネスチャンスが拡大する。「金利のある世界」の方が「ゼロ金利」よりプラス面が多いと見るが、果たしてどうだろうか・・・

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