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コラム(15日)、米中貿易摩擦再び激化、不穏な空気に包まれる国際情勢

バイデン大統領が中国からの輸入品に対する関税の大幅引き上げを発表した。トランプ前大統領はすでに全ての輸入製品に10%、中国製品は関税を60%に引き上げると表明している。11月に控えた大統領選挙を意識した有権者対策でもある。だが関税の引き上げはインフレ加速要因でもある。トランプ氏の政策に批判的だったバイデン氏が事実上同氏の政策を追認する形になる今回の関税引き上げ、思惑通りに有権者の心をつかめるかどうか判然としない。今回の発表を受けて中国商務省は声明を発表、「中国は自国の権利と国益を守るため断固たる措置を講じる」と表明している。折からロシアのプーチン大統領は16日、17日と中国を訪問。習近平主席と様々な問題について意見交換することになっている。火に油を注ぐ形となった対中国関税の引き上げ、国際政治の先行きにもまた一つ黒い影が加わった。

今回の措置についてバイデン大統領は「関税引き上げを、窃盗や欺瞞(ぎまん)、不当な廉価販売から米国の労働者と企業を守るために必要な措置だ」と強調している。対象となるのは半導体チップやバッテリー、太陽電池、重要鉱物を含む広範囲にわたる中国製品。すでに関税引き上げが発表されている一部の鉄鋼やアルミニウム、電気自動車(EV)に加え、港湾クレーンや医療用品の関税率も引き上げる。ホワイトハウスによると、「現時点で年間180億ドル(約2兆8200億円)相当の輸入品に影響が見込まれる」としている。発表を受けてトランプ前大統領は間髪をおかず「生ぬるい」と反発している。引き上げ幅は製品によって異なるが、大半の製品は25%〜50%の引き上げとなる。実施は今年から26年にかけ、時期をずらして発効させる方針だ。大統領選を挟んで実施すると発表することで、選挙への自信を示そうとしているのかもしれない。

トランプ氏によって幕が切って落とされた米中の貿易戦争。イエレン財務長官は「バイデン大統領と私はこれまでに、人為的に低価格に設定された中国からの特定の輸入品急増が米国のコミュニティーに影響を及ぼすのを直接、目にしており、その再発は容認しない」とコメントしている。裏返せばトランプ氏の政策が正しかったことを間接的に認めたことになる。そのトランプ氏はすでに60%に引き上げると表明している。経済不振にあえぐ中国にとっては手痛い打撃になるだろう。当面は「断固たる対抗措置」の中身に世界中の関心が集まることになる。気になるのは、中ロ首脳会談に合わせる形で発表したことだ。ここにバイデン政権の何がしかの“思惑”が隠されていそうな気がする。それが中ロの出鼻をくじく作戦だとすれば、逆に本物の戦争を煽る危険性もありそうな気がする。いずれにしても不穏な空気に覆われている国際情勢の先行きが心配になる。

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