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僕は図書館に通っている。 とはいっても本当の図書館じゃなくて、僕ん家の近所にある、本がいっぱいある家の事だ。いつでも勝手に入って自由に本を読んでいい、って、そこに住むおばさんに言われている。だからありがたく僕は毎日のように図書館(と呼んでいるその家)で読書をするし、ついでに勉強もする。 僕は学校が苦手だ。いじめ、ってほどじゃないんだけど、クラスメイトとどうにもうまくいかなくて、教室にいるとだんだんお腹が痛くなるようになってきて、それでまあ不登校っていうか、そんな感じにな
おばあちゃんの家庭菜園で羊が咲いた。 野菜を育てている隣で幾種類かの花も植えられているおばあちゃんの畑で、小さな羊が咲いたのだ。僕はてっきりそこに植わっているのはチューリップだと思っていたのに、茎の先に付いているのは花びらではなく真っ白な毛並みをもつ羊の顔だった。 羊にそっくりな花というものがあるのだろうか? しかし、咲いた羊は口からメェメェと鳴き声を発し、目をギョロギョロと動かしていて、どうも生きた動物としての羊に見えた。それも、ちょっと不気味さがある。 だけどお
ふわあぁ。 あ、どうもどうも、突然ですが貴方は眠れていますか? 私はどうにも眠気はあるのに眠れなくてですね、こうして夜の街を歩いている訳ですよ。 ああ、いいえ、これは気分転換の散歩でもないですし、軽い運動をして良い睡眠をとろうとしているのでもありません。ほら、羊。羊を探しているんですよ。 羊が一匹、羊が二匹。眠れない時に羊を数えるのは定番でしょう? でもね困った事に、肝心の羊がいなければ数える事もできないじゃないですか。だから、こうして街の中で羊を探しているのです。
学校から帰ると、うちの庭に変な羊がいた。 すっごくでっかいし、毛が緑色。なんだろこいつ、と思ってランドセルを背負ったままじろじろと眺めていると、羊の背後から、知らない人が顔を出す。 「お、君がタカシくんかな」 知らない人が、僕の名前を知っている。……って事は父さんの友達か。 僕の父さんには、しょっちゅういろんな人と仲良くなっては家に連れてくるという癖がある。今回もそれだろう。と考えていると、その父さんの声が僕の背後から。 「タカシおかえり。お客さんに挨拶したか?」
#写真小説 月が、ぽっかりと浮かんでいた。 真ん丸だった。あぁそうか、今日は満月だったのか。 「月が綺麗ですね」 と、呟いてみる。ひとりぼっちで。愛を伝えるべき相手は今、俺の隣にはいない。いや、これからもずっといない。 愛する彼女。もう失ってしまった彼女。 ささいな口論が、永遠の別れを生み出した。 俺は空に浮かぶ月を見つめる。あの月のように美しい人。彼女の事を忘れる日など、きっと永遠に来ないだろう。 それにしても、あぁ、見事に真ん丸だ。 まるで。 まるで、