メーカーが考えるモノ売りからの脱却とTwitterスポンサー募集の試み
「所有の時代」から「利用の時代」へ。
お客さんが本当に欲しいのはドリルではなくて穴だという格言よろしく、産業界、特にメーカー界隈ではモノ売りからサービス売り、価値提供へのシフトが騒がれている。
日系メーカーである勤め先も多分に漏れず、特に先進国でのモノ売りからの脱脚をテーマにいろんな人が挑戦を試みている。
SaaS然り、Maas然り、価格付けはモノベースではなく価値ベースへと変わり、売り切りからサブスクリプションへの転換によって売り手も買い手もハッピーになるという寸法だ。
アメリカで3年間駐在し、UberやLyftが実際に生活に浸透していった体験を経て、個人的に上記の流れには疑いはない。
というわけでこれも多分に漏れず、自分もそうしたモノ売りからの脱脚プロジェクトに関わっているのだけれど、予想通りどころか予想以上に簡単ではない。
外に目を向ければ成功事例はある。Photo Shopで有名なAdobeが代表例。
ドリルと穴の例えよろしく、Adobeが提供するのはPhoto Shopではなく綺麗な画像。
その価値を最大化するためのサブスクリプション販売への全面切り替え、そして販売形態に伴って起きるであろうバックヤードの変革、株主や財務を取り巻く説得と調整の苦労は想像を絶するし、やりきったことにはいち社会人としてうっとりするほど憧れる。
と、憧れている場合ではなく、アメリカから帰国して自分がまさにその一旦を担う立場になって考えているのだけれど、これが思った以上に困難であるという事実に日々直面している。
「社内外の抵抗勢力という壁にぶち当たりながらそれを壊していく」という池井戸潤的なドラマチックな世界観ではなく、むしろ薄皮を1枚1枚はがしていくような地道で気の遠くなる作業のような感覚。
それは当たり前で、メーカーとして、これまでモノを作って売ることに極度に最適化した組織だから変化を嫌う。それも決して小さくはない会社でこれをやる複雑さたるや。小さな進捗に喜びを見出すこと1割、無力感を覚えること9割といったバランスで、ここのところずっともがいている。
一番のポイントは、価値に対する値付け。
値決めは経営であるという稲盛さんの格言よろしく、モノに紐付かない価格付けの妙と格闘する毎日。
「これまでx円で売ってy年間使ってもらっていたのだから月々z円で売ればいい」といった発想では旧来型のプロダクトアウトとリース契約の時代となんら変わりがないので、
「価値はお客さんが決めるもの。小さく始めて検証していこう」といういわゆるPoCの考え方に寄った活動へと移っていくのだけれど、頭では分かっていてもアクションが追いつかないことが往々にしてある。
おじさん世代に比べれば自分の方が柔軟なはずが、後輩の指導をしていると10年以上の(早いもので)メーカー生活で多少なりとも思考にバイアスがかかってしまっているのだなと気づかされることがしばしば起こる。
この思考に刺激を加えないと大きな変化が望めないぞと考え始めた時に、前々から興味があったTwitterでのスポンサーというのを募集してみることにした。
話が急に仕事から個人の、しかも匿名で鹿アイコンのTwitterに移ったので驚かれるかもしれないが、2017年に生まれた小生、へらじかは仕事でできない数々の検証行為をブログやSNS等で実施してきた。
2017年の駐在当初は、アメリカ市場のスピード感と日本の本社の決裁の遅さのギャップにやきもきしていた鬱憤を晴らすべくブログ記事を自分で生み出し小さく提供し、フィードバックを得てくるくる回していた。
(アメリカ時代に書いた60数個の記事は未だに読まれていて嬉しい)
Slackを通じて英語学習の後押しをしてみた時期もあった。
他業界からのインサイトを得たいという時には、仕事での繋がりに限らず、Twitterで知り合った方から刺激を受けたり学ばせてもらうという機会も何度も得た。
わずか2年弱で人生にこれだけの変化が起こせるという体験をしたことは、いわゆる安定志向のメーカーに身を置き家庭を持ち2人の子を育てている立場の対極のような出来事。
思考と試行の実験の場としてブログやSNSを活用してきた、その次の施行として、スポンサー募集をしてみた次第。
広い意味での、無形サービスへの価格付けがどのように行われるのかを検証するため。そして自分が気づかない自分の価値を外から見てもらうため。
「おれは小さく始めて検証していこうって上司に言ったんだけど、動かないんだよなー」なんて仕事の愚痴を居酒屋で語るよりは、個人でも(たとえ匿名アカウントでも)何か一歩を動かしてみたくて、まずはやってみることを決めた。
スポンサー料は未決定。言い値を提示頂いて検討予定。
これは自分のアカウントが持つ数字と日々の発信という無形のものにどんな価値があるのか、そこにはたして価格はつくのか、いくらが妥当なのかは誰にも答えがないため。
金銭を要求する行為と見なされ卑しいという批判が仮に出たとしたら、それこそまさに自分が仕事で直面する「無形サービスへの対価」についての率直な反応だと思えるので大事にしたい。
その意見を深掘りしてみたり、市場の選択を変えてみたりと試行錯誤に活かしたい。仕事で許されない失敗を個人で体験する意気で。
募集をしてみて希望者がゼロだったら、それはそれで挑戦した意味がある。
と、思っていた矢先に1名の方が興味を示してくださったので、フォロワー数万人規模じゃなくても何かが起こるんだなと、さっそく興味深い体験をさせていただいている。
(正直に言って、誰からもリアクションがなかったら恥ずかしいなと思う気持ちはあったので、救われた思いでもある)
応募はTwitter上で、締め切りは6月25日(火)まで。
その後月末までに希望者の方と諸条件を調整して7月スタート予定。
Twitterスポンサーの経験が仕事に活きるかどうかの確証はないけれど、募集をかけた段階ですでにちょっぴりワクワクしているので、自分から行動を起こすことの楽しみは尽きない。
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好きなコーヒー豆を買い、早起きをして、また何かを書きます。