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いまさら聞けないバリューチェーンの基本【フレームワーク#07】

皆さん、こんにちは。
MOONSHOT WORKS株式会社代表の藤塚洋介です。

このページでは、バリューチェーン分析の基礎から実践的な活用方法、デジタル化の影響まで、図解や事例を交えて分かりやすく解説します。

新規事業に関係があるの?と思う方も多いかもしれませんが、実はアイデア出しにすごく使える分析手法なのです。

自社の強み・弱みを理解し、競争優位性を高めるための実践的なヒントを見つけてくださいね。

実はよくわかっていないという方は基本編にバリューチェーンの基本や事例を掲載しました。

ある程度知っている、新規事業で使いたいという方は次の記事に書く実践編を読んでみてくださいね。


バリューチェーン分析の基本

バリューチェーンとは?

バリューチェーンとは、企業が製品やサービスを顧客に提供するまでの全活動を網羅した一連の流れです。

原材料の調達から、製造、販売、アフターサービスまで、顧客に価値を提供するすべてのプロセスが含まれます。図解で示すと、主要活動と支援活動が繋がり、最終的に顧客価値を生み出す流れが視覚的に理解できます。


バリューチェーン分析を行うことで、各活動の価値貢献とコスト構造を明確にし、ビジネスモデルの全体像を把握、強化点や改善点を特定できます。

構成要素の解説

バリューチェーンは「主要活動」と「支援活動」の2つの要素で構成されます。

主要活動は製品・サービスの物理的な流れに関わる活動で、購買、製造、出荷、マーケティング・販売、サービスが含まれます。

支援活動は主要活動を支え、企業インフラストラクチャ、人事管理、技術開発、調達などです。
以下に図解や事例を用いて、各活動の具体的な内容を解説します。

バリューチェーンの構成要素:詳細と図解

バリューチェーンは、主要活動と支援活動の2つのカテゴリに分類されます。それぞれが相互に関連し合い、企業全体の価値創造プロセスを形成しています。

主要活動

主要活動は、製品やサービスの物理的な作成、販売、そしてアフターサービスに関わる活動です。

バリューチェーンの基本図解

購買 (Inbound Logistics):
必要な原材料、部品、消耗品などを最適な価格と品質で調達する活動です。サプライヤー選定、在庫管理、品質管理などが含まれます。

事例:
自動車メーカー: 鉄鋼、樹脂部品、タイヤ、電子部品などをサプライヤーから調達。
IT企業: ソフトウェアライセンス、ハードウェア、クラウドサービスなどを購入。
カフェ: コーヒー豆、ミルク、砂糖、カップな

製造 (Operations):
投入物を最終製品またはサービスに変換する活動です。製造プロセス、生産管理、品質管理などが含まれます。

事例:
自動車メーカー: 部品の組立、塗装、検査など、自動車を製造する一連の工程。
IT企業: ソフトウェアのコーディング、テスト、デバッグなど、ソフトウェアを開発するプロセス。
カフェ: コーヒー豆の焙煎、抽出、ドリンクの作成。

出荷 (Outbound Logistics):
完成品を顧客に届ける活動。倉庫管理、配送、注文処理などが含まれます。

事例:
自動車メーカー: 完成車の輸送、ディーラーへの配送。
IT企業: ソフトウェアのダウンロード提供、パッケージ版の出荷。
カフェ: ドリンクの提供、テイクアウト商品の梱包。

マーケティング&販売 (Marketing & Sales):
顧客に製品やサービスを認知させ、購入を促進する活動です。広告、プロモーション、価格設定、販売チャネル管理などが含まれます。
最近では部署や役割が分かれていることも多く分けて記載するのがベターです。

事例:
自動車メーカー: テレビCM、Web広告、ディーラーでの販売促進活動。
IT企業: オンライン広告、Webサイトでの情報提供、セミナー開催。
カフェ: SNSでのプロモーション、店頭でのPOP広告、季節限定メニューの販売。

サービス (Service):
販売後の顧客サポートを提供する活動です。修理、メンテナンス、問い合わせ対応、顧客満足度調査などが含まれます。

事例:
自動車メーカー: 車検、修理、アフターパーツの販売。
IT企業: ソフトウェアのアップデート、テクニカルサポート、バグ修正。
カフェ: 顧客からの問い合わせ対応、苦情処理。

支援活動

支援活動は主要活動を支える基盤となる活動です。

企業インフラストラクチャ (Firm Infrastructure): 企業全体の経営管理、財務管理、法務などを含む、企業活動を支える基盤となる活動です。

人事管理 (Human Resource Management):
従業員の採用、教育、訓練、評価、報酬などを含む、人材に関する活動です。

技術開発 (Technology Development): 
製品開発、プロセス改善、情報システム開発などを含む、技術革新に関する活動です。

調達 (Procurement):
企業活動に必要な資源(原材料、設備、サービスなど)を調達する活動です。購買活動とは異なり、購買以外の調達活動全般を指します。

バリューチェーン全体の図:
主要活動と支援活動がどのように連携し、顧客に価値を届けているかを示す全体図を配置することで、より理解が深まります。各活動の繋がりを明確に示し、最終的に顧客価値に繋がることを視覚化することが重要です。

このように、図解と具体的な事例を組み合わせることで、バリューチェーンの各構成要素とその役割をより分かりやすく理解することができます。それぞれの活動がどのように価値創造に貢献しているかを理解することは、企業の競争優位性を高める上で非常に重要です。

バリューチェーンとサプライチェーンの違い

バリューチェーンは自社内での価値創造プロセスに着目する一方、サプライチェーンは複数の企業を跨いでの製品・サービスの流れに着目します。サプライチェーンは、複数の企業のバリューチェーンが連結したものです。全体最適化のためには、両者の連携が不可欠です。

バリューチェーン分析のステップ(実践編)

ステップ1: 対象範囲の明確化

分析対象(特定の製品、サービス、事業単位など)と分析目的(コスト削減、差別化、新製品開発など)を明確に定義します。

ステップ2: 各活動のコスト分析

ABC分析(活動基準原価計算)やプロセス分析を用いて、各活動にどれだけの費用がかかっているかを分析し、コストドライバーを特定します。

ABC分析とは
ABC分析は、新規事業や事業戦略において、資源配分の最適化や効率的な管理を行うための有効な手法です。売上や在庫、コストといった指標を元に、重要度に応じて項目をA・B・Cの3つのランクに分類し、優先順位を明確にすることが目的です。これは「重点分析」とも呼ばれ、事業成長のための管理資源を効果的に振り向けるための基盤となります。

具体的には、Aランクの商品や項目は売上全体の中でも特に大きな割合を占めるため、優先して管理し、在庫を切らさないよう注意します。特別な対応は必要ないもの、現状が急遽とされます。Cランクの商品や項目については、売上への影響が小さいため、取り扱いの終了や他の商品へのリソース移行を検討するケースもあります。

新規事業の視点から考えると、このようなABC分析による資源の重点管理により、成長可能性の高い商品やサービスへ戦略的に投資でき、無駄な在庫やコストの削減が可能になります。

ステップ3: 強みと弱みの評価

SWOT分析やベンチマーキングを活用し、競合他社と比較することで自社の競争優位性を分析します。

価値創出への貢献度、コスト効率、顧客満足度などを評価基準として用います。

バリューチェーン分析のメリット

経営資源の最適化

バリューチェーン分析により、強み・弱み、機会・脅威を把握することで、経営資源(人材、資金、設備など)を最適に配分できます。強みへの投資、弱みの改善、アウトソーシングの検討などを効果的に行うことができます。

競争優位性の構築

バリューチェーン全体の最適化を通じて、コスト優位性(低価格戦略)や差別化優位性(高付加価値戦略)を築き、競争力を高めることができます。最終的には、顧客に提供する価値を高め、市場での成功へと繋げます。

バリューチェーン分析の実践事例

ここでは、様々な業界の企業がどのようにバリューチェーン分析を活用し、競争優位性を築いているのか、具体的な事例を通して見ていきましょう。

スターバックス:高品質な顧客体験の提供

スターバックスは、差別化戦略を軸にバリューチェーンを構築し、高品質な顧客体験を提供することでプレミアム価格を実現しています。

購買:
高品質のアラビカ種のコーヒー豆を倫理的に調達。長期的な関係構築による安定供給と品質確保。

製造:
独自の焙煎方法と抽出技術による高品質なコーヒーの提供。バリスタのトレーニングによる高いスキルと知識の習得。
出荷:
効率的な物流システムによる店舗への迅速な配送。鮮度を保つための最適な保管方法の採用。
マーケティング&販売:
洗練された店舗デザインと居心地の良い空間の提供。ブランドイメージを高めるマーケティング活動。モバイルオーダー&ペイによる利便性の向上。
サービス:
バリスタによる丁寧な接客とカスタマイズされたドリンクの提供。顧客との関係構築を重視したコミュニティづくり。
成功要因:
高品質な製品・サービス、洗練されたブランドイメージ、顧客ロイヤルティの向上。これらは高い顧客単価、リピート率、そして従業員満足度(高いモチベーションによる質の高いサービス提供)に繋がっています。

IKEA:低価格戦略の実現

IKEAは、コストリーダーシップ戦略を軸にバリューチェーンを構築し、徹底的なコスト削減によって低価格を実現しています。

購買:
大量仕入れと長期契約による仕入れコストの削減。世界各地のサプライヤーとの効率的な連携。

製造:
フラットパック方式による製品の簡素化と輸送コストの削減。顧客による組み立てという独自のバリューチェーン。

出荷:
効率的な物流システムと大規模倉庫による在庫管理の最適化。
マーケティング&販売: シンプルなショールームとセルフサービス方式による人件費の削減。効果的なカタログマーケティング。

サービス:
限定的なアフターサービス提供によるコスト削減。

成功要因:
徹底的なコスト削減、効率的なサプライチェーン管理、顧客の積極的な参加によるバリューチェーンの効率化。これらは低い製品原価、物流コスト、そして高い顧客一人あたりの売上につながっています。

トヨタ自動車(製造業):効率的な生産体制

トヨタ自動車は、「ジャスト・イン・タイム」方式を核とした効率的な生産体制を構築し、高品質な自動車を競争力のある価格で提供しています。

購買:
長期的なサプライヤー関係の構築と信頼に基づいた部品調達。カンバン方式による無駄のない在庫管理。

製造:
ジャスト・イン・タイム生産方式による効率的な生産ラインの構築。カイゼン活動による継続的なプロセス改善。

出荷:
世界各地への効率的な物流ネットワーク。ディーラーネットワークによる販売網の整備。

マーケティング&販売:
グローバルなブランド戦略と多様な車種の展開。販売金融サービスの提供。

サービス:
高品質なアフターサービスとメンテナンスサービスの提供。顧客データに基づいたサービスのパーソナライゼーション。

成功要因:
ジャスト・イン・タイム生産、カイゼン活動による継続的な改善、強力なサプライチェーン。これらは高い生産性、低い不良品率、そしてサプライヤーとの連携によるコスト削減効果に繋がっています。

セールスフォース(IT企業):技術革新による価値創出

セールスフォースは、クラウドコンピューティング技術を活用したCRMソフトウェアを提供し、顧客に新たな価値を提供することで高い収益性を実現しています。

技術開発:
クラウド技術への積極的な投資と継続的な技術革新。顧客ニーズに合わせた新機能の開発。

購買:
クラウドインフラの活用によるハードウェアコストの削減。戦略的パートナーシップによる技術提携。

製造 (ソフトウェア開発):
アジャイル開発手法による迅速な開発サイクル。DevOpsによる開発と運用の連携強化。

マーケティング&販売:
オンラインマーケティングとデジタルセールスによる効率的な顧客獲得。サブスクリプションモデルによる安定的な収益確保。

サービス:
オンラインサポート、コミュニティフォーラム、トレーニングプログラムによる顧客サポートの提供。

成功要因:
クラウド技術の活用、アジャイル開発、顧客中心の製品開発。これらは高い開発スピード、低い顧客獲得コスト、そして高い顧客生涯価値につながっています。

リッツ・カールトン(サービス業):卓越した顧客体験

リッツ・カールトンは、「クレド」と呼ばれるサービス哲学に基づき、従業員一人ひとりが顧客に最高のサービスを提供することで、高いブランドロイヤルティを築いています。

人事管理:
厳格な採用基準と徹底した従業員教育。従業員のエンパワーメントと自主性を重視した組織文化。

サービス:
顧客のニーズを先読みしたきめ細やかなサービス提供。パーソナライズされたサービスと特別な体験の創出。

マーケティング&販売:
口コミマーケティングと会員プログラムによる顧客ロイヤルティの向上。ラグジュアリーブランドとしての地位確立。

企業インフラストラクチャ:
高品質な設備と洗練された空間の提供。

成功要因: 従業員エンパワーメント、顧客中心主義、卓越したサービス文化。これらは高い顧客満足度、リピート率、そして従業員一人あたりの売上につながっています。

これらの事例は、それぞれの企業が異なる戦略に基づき、バリューチェーンを最適化することで競争優位性を築いていることを示しています。

自社のビジネスモデルや戦略に合わせて、バリューチェーンのどの活動を強化すべきかを分析することが重要です。

いかがでしたか?次の<実践編>では高度な活用方法、新規事業での使い方、チェックリストやQAなど、実践する為のより具体的な手法を書いていきますのでお楽しみに!



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