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ものづくりにこだわりビジネスを見失う

日本はものづくり国家と標榜していました。
かつては良品率100%で、設定した不良率に合わせた不良品を別途用意して納品したなどという小話があるほど、勤勉さに由来する品質の高さが特長でした。
ところが今では他国に技術開発で追い抜かれ、携帯電話でガラパゴスと言われた時代のまま成長が止まっている印象です。
これは国家としての衰退だけでなく、多くのメーカーでも見られる姿です。
何故そんな事態になるのでしょう。

ものづくりにこだわる。
私たちにとってそれはとても魅力的です。
歴史があり、ストーリーがあり、信頼が持てる製品を提供してくれるような期待感があります。
ところがこれをビジネスとして考えるとどうでしょう。
ものづくりとは商品企画、開発、製造のプロセスです。
場合によってはマーケティングミックスのProductに絞られてしまいます。
ビジネスの観点で階層を捉えると製品の上には商品、更に事業、経営、産業という順に大きくなっていきます。
会社経営という観点で見れば、ものづくりへのこだわりはある事業を構成する商品の企画•開発•生産工程の話でしかなく、低い階層の狭い領域に過ぎません。
果たしてそれは戦略を大局的に見た時に重要な要素なのでしょうか。

勿論ものづくりが非常に重要な要素なのは間違いありません。
ですが間違ってはいけないのは、それは手段であって目的ではなく、プロセスであって戦略ではないということです。

経営者は経営を事業責任者は事業を、そして各管理職が商品を見ていきます。
そこには一貫した方針と戦略があり、方針と戦略に基づいて現場レベルにものづくりへのこだわりが求められます。
この階層ごとに見るべきものを外れ、視座が低くなってくると戦略は戦術に、戦術は場当たり的な対応に変わってしまうのです。

ものづくりへのこだわりは重要です。
重要ですが、その前提には経営の視座と一貫した戦略があるのです。

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