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ヒット商品分析法

商品企画の使命はヒットを量産すること。
そしてその仕組みを組織の中で普及することです。
残念ながらそれは簡単なものではなく、よその業界、隣の企業ではヒット商品が生まれているのに、自社では無難な実績しか上がらないというのもしばしばです。
ヒット商品を生み出すことを意識しつつも、世の中の商品が何故ヒットしているのかを考えることも重要です。
そこで簡単なトレーニングをしてみましょう。

何か一つヒット商品だと思えるものを思い浮かべてください。
そして「〇〇は××によってヒットした」という具合にヒットした理由を添えて文章にしてみてください。
また、同様に何か一つ大失敗した商品だと思えるものを思い浮かべてください。
同じく「〇〇は××によって失敗した」という具合に大失敗した原因を添えて文章にしてみてください。
成功は他社商品、失敗は自社商品だと分かりやすいかもしれません。

さて、どんな文章になったでしょうか。
例えば「パナソニックのドライヤーは髪に潤いを与える機能でヒットした」
逆に「自社のドライヤーは音がうるさ過ぎて大失敗した」
こんな文章を作ったとします。
考えたいのはこれらを反転した時にどうなるかです。
「××さえあれば〇〇のようにヒットするはず」
「××を改善すれば〇〇もヒットするはず」
こんな文章です。
「自社も髪に潤いを与える機能さえ搭載すればパナソニックのようにヒットするはずだ」
「自社も音さえどうにかすればヒットしたはずだ」
これらが成り立つかどうかを考えてみましょう。

反転した文章に違和感を覚えることができれば、あなたにはマーケッターの素質があるということです。
世の中はそんなに短絡的にはできていないということが感覚的に身についているからです。

さて、ここからが大変です。
まずは4Pの観点で考えてみましょう。
機能や性能の話は製品の話ですから、価格、販路、販促についても考える必要があります。
価格は関係ない、販促は関係ないなど、ヒットに影響しなかったと思われる項目も文章には入れる必要があります。
「高価格にも関わらず」「目立った広告宣伝を行わなかったにも関わらず」といった形で入れます。
「パナソニックは乾かすだけでなく髪に潤いを感じさせるドライヤーによって長年に渡りプロモーションし続け、全国どこの家電量販店でも変える状態にすることで高価格にも関わらずヒットした」
端折ってもこのくらいの文章になります。

次に「ヒットした」というからには競争環境を考えなければいけません。
新たに追加するのは3Cの視点です。
競合がないという環境は今の世の中ではありませんので、競合とのどんな違いが有効だったのか、それがどのような市場•顧客に響いたのかを肉付けしていきます。

「パナソニックは他社にはない唯一無二の乾かすだけでなく髪に潤いを感じさせるドライヤーによって長年に渡りプロモーションし続け、全国どこの家電量販店でも変える状態にすることで高価格にも関わらず潤いドライヤーというカテゴリーを創出してヒットした」

更に考えるならSTPです。
購入者はどんなセグメントなのかを見ていくともっと具体化していきます。
「パナソニックは他社にはない唯一無二の乾かすだけでなく髪に潤いを感じさせるドライヤーによって忙しく働く中でも美容意識を高く維持している女性に向けて長年に渡りプロモーションし続け、全国どこの家電量販店でも変える状態にすることで高価格にも関わらず潤いドライヤーというカテゴリーを創出してヒットした」
このように分析らしくなってきます。
4Pも3CもSTPも物事をMECEに切り分けるフレームワークですから、思い込みだけで進めなければ確からしい答えが見えてくるはずです。

成功も失敗も、冷静に分析するにはきちんとフレームワークを使うことから始まります。
そしてフレームワークに囚われ内容にするには、まずは最初の閃きから入って、分析不足に対する違和感を持つことです。

お気付きの方もいると思いますが、3C、STP、4Pで見れば終わるわけではありません。
市場や競合を考えるなら5フォースで周辺を捉える必要もありますし、SWOTで内外の環境を見る必要もあります。
顧客に踏み込むならAIDMAやAISASといった購買行動に踏み込まなければ分からないことも出てくるでしょう。
「だからヒットした」「だから失敗した」
そんな言葉でまとめられるほど簡単ではないものなのです。
忘れてはいけないのはどこまで細かく目を向けるかです。
それが商品企画の、マーケッターの仕事なのですから。

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