粋生美月

込み上げる想いに気付いたら、言葉を紡ぐ瞬間。書くことは衝動。衝動は欲望。ノンバイナリー…

粋生美月

込み上げる想いに気付いたら、言葉を紡ぐ瞬間。書くことは衝動。衝動は欲望。ノンバイナリーです。HSPとADHDでもあります。関西生まれの関西育ち。この星に生まれてもう半世紀。心は永遠にひよっこのまま。

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  • 短編物語

    短編小説として書いたもの集めました。

  • ワタシノコト

    自己紹介代わりに。自己分析系をまとめました。

  • ユウとカオリの物語

    LGBTQ+当事者カップルの2人が描く恋愛小説。ユウ目線でのお話と、カオリ目線のお話を2人で書きあっています。セクシャルマイノリティの世界ではない、ごく日常の中で出逢った2人の物語。第2章ではジェンダーやセクシャリティ、その他マイノリティの世界を当事者目線で描いていきます。

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ノンバイナリーと格闘技

ノンバイナリーという言葉が突然にしっくりきたのは、自分は子供のころからずっと、男女二元論に苦しめられてきたからなのだと。小さい頃はどっちでもよかったはずの性別が、男女どちらかに振り分けられてしまう違和感。思い返せばその違和感は、成長とともに増していくことになったのだと。 思春期に入ると自分が好きになるのが全て女性だということに気づいた。長い期間、いじめられた経験が多かった小学生の頃。10代のわたしは正直ずっと、甘えさせてくれる女性を探し求めていた。 20代になってセクマイ

    • 切り替えスイッチ

      noteでフォローしている方の記事を読んだりしていて、ふと、自分の子供の頃もよく似た状態だったのかもしれない、という思いになった。彼女が心理系に詳しい人なのだけれど、彼女も同意見だった。 数年前に受けた心理カウンセリングでのこと。性別や国籍、表情など多種多様な子供が、1枚1枚描かれた数十枚のカードを前に出されて先生から 「子供の頃の自分に一番似たカードを選んでください」 と言われた。わたしがカードを順番にしばらく見ながら戸惑っていると先生からまた、 「1枚じゃなくても

      • 《ユウとカオリの物語》番外編:素敵な人たち

        「今から練習、行ってくるよ!」 仕事を終えた僕は最寄りの駅から電車に乗って、カオリにLINEした。仕事終わりのジム練習。少し間が空いて久しぶりになっていた僕は、ワクワク感ににやけながらスマホを握りしめていると、カオリから返事が来た。 「行ってらっしゃい(^^)」 フフ...... 付き合い始めのカオリは、メールもメッセージもえらく短い文章が多かったんだよね。絵文字も使う習慣がなくってさ。だから僕は、「短い文章の時は、最後に絵文字を付けるのは相手への気遣いだよ。文章だけ

        • 詩│言葉の色と風

          言葉には色がある 嬉しい時は嬉しい色に 楽しい時は楽しい色に 悲しい時は悲しい色に 寂しい時は寂しい色に 言葉から色が滲み出る そして僕は言葉の色を知る その変化が生まれる時には ふわっとした風も吹く 風の温度 風の質感 それは僕に 人の感情の変化を教えてくれる 僕はその心の動きを知る この小さな画面の 小さく短い文字達も 色と風で僕に知らせてくれる 今こんな色なんだよ ほら、今冷たい風が吹いたでしょ 自らを見ることに 目を向けてこなかった人からも 言葉は

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        記事

          鈍感な君

          「わたし、悲しかったみたい」 君は突然にそう言って、 堰を切ったように泣いた。 僕がふと見つけた君の色の変化に 君がやっと気づいた心の痛み。 大事に抱えていたものは どんなにか重かっただろう。 そしてどんなに、痛かっただろう。 身体の痛みにも 心の痛みにも 君はいつも 鈍感だったね。 だから僕は 気になる人の心の動きに敏感という 特技を身に着けて君に出逢えたんだね。 君の表情 君の仕草 君の文字 君の言葉 そのすべてに色が見える。 大丈夫。 これからは僕がそ

          エッセイ│エンパス?感知センサーのこと

          わたしには少し、特殊な能力がある。 わたしには、人の感情の動きや、人の心の負の部分を敏感に感知するセンサーがあって、どうやらそれはとても鋭いセンサーのようなのだ。 特に負の部分を感知するセンサーは鋭すぎて、だけれどなんの知識もなかった頃のわたしは、感知したものを間違って読み取っていたり、ただただ持て余したりもしていた。 これをセンサーだと表現したのは、愛する彼女。「優れたセンサーよね」そう、言ってくれた。 だからこそ、知識をつけること、勉強することを進めてくれた。優れ

          エッセイ│エンパス?感知センサーのこと

          [短歌]生き抜いてきた君に[返歌]

          生きるのも 悪くないわと 抱き寄せて 笑む君の胸 強き鼓動と 柔手(にこで)にも 生き抜いてきた 道の数 刻む皺さえ 愛しき君よ --------------------------------------- 先日の彼女の短歌への返歌です。 https://note.com/rkmoon/n/n48c667aca484?sub_rt=share_pw

          [短歌]生き抜いてきた君に[返歌]

          [詩]君がいない夜

          自由な君を 願う僕 自由な君を 想う僕 きっと今頃 笑う君を そっと ここに抱いて ポツリと落ちる雨音の 数を数えて閉じる夜

          [詩]君がいない夜

          ノンバイナリー的ジェンダー論

          「ノンバイナリー」 その言葉を知ったのは、ちょうど2年前の夏、だったかな。 【宇多田ヒカル、「ノンバイナリー」をカミングアウト!】 ニュースでそんなタイトルが踊っていた。 わたし自身の性自認はそれまで、Xジェンダーと認識していたし、自分は男性よりの中性だと思っていた。ノンバイナリー、という言葉を聞いたときもただ単に、「あぁ、また新しい言葉が出てきたんだなぁ」それくらいにしか、捉えていなかったし、特段惹かれる言葉でもなかった。 そしてその数か月後、心理カウンセラーの先

          ノンバイナリー的ジェンダー論

          第2章[第7話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》ユウの想い

          前回話 カオリ目線のお話はこちら 第6話はこちら  初めて出逢った時の君は、ステンドグラスの光に照らされて、とっても寂しそうに微笑んでいた。「座りませんか」そう言って僕に微笑んだ君は、その寂しさを覆い隠すような、優しさに包まれていた。  気づけば僕は、暗い裏路地に突っ立っていた。あれ?僕なんでここにいるんだろう?ここはどうだろう?カオリ、どこ行っちゃったんだろう?道に迷ったのかな。僕を探しているだろうな。ん……?待てよ?……あ、ここ、覚えてるぞ。あっちの道をまっすぐ行っ

          第2章[第7話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》ユウの想い

          第2章[第6話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第5話はこちら 幸せのカタチなんてね、 100人いれば100通りあるわよ。 何が正しいのか、なんてのもね、 立場や環境が変われば、簡単に変わるのよ。 幸せも、正しさも、一つじゃない。  僕はこの日、仕事を定時に切り上げて、急ぎ足でとある場所に向かっていた。電車とバスを乗り継いだ後、はやる気持ちを抑えながらアーケードを急いだ。しばらく歩くと、カオリから聞いていた建物が見えて、僕はドキドキしながらエレベーターに乗った。エレベーターが開くと、そこにはカオリがニコニコしながら立っ

          第2章[第6話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2章[第5話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第4話はこちら 「胸なんてさ、朝起きてポロっと取れてたらいいんだよなぁ。手術しようとまで思わないしさ。あ、でもだからと言って男性の身体もいらなくない?ユウちゃんはどう思う?」 「そうそう!それめっちゃわかるな。僕はトランスでもないしさ、どっちつかずがあってもいいよね。そんなにバシっとどっちかに振り分けられないよ。僕らは中途半端でいいんじゃない?」 「あはは……中途半端かぁ、そうだよねぇ…...うん、中途半端な人間だって、いるんだよ!」  僕はふと、若い頃に仲良くしてい

          第2章[第5話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2章[第4話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第3話はこちら 「時々すごく男の子の顔になる時あるよね!おもしろーい」 昔片思いで好きだった女性に言われた言葉を、ふと思い出していた。男の子の顔の時、か......それはきっと、好きな人と話す時だったからだよな。あの時は深く考えてなかったけど、だったら女の子の顔の時もあったってことだよな。うん。でもそれが振られた原因になったんだよな。 あ、でも、そか、カオリが言ってたな。 「あなたは相手に合わせてきただけよ」 うん、そうだ。カオリに言われて気づいたんだった。 好きな

          第2章[第4話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2章 [第3話]《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2話はこちら だって子供でしょ。 子供時代の自分を、 子供扱いしてあげてよね。 ※ ※ ※ 通勤途中、最寄り駅までのいつもの田舎道。ここの風景が僕は大好きだ。 特に夏は、真っ青な空に浮かぶ動物みたいな雲を数えながら歩くと、揺れる青い稲が目の前一面に広がって、そこを抜けると大きな向日葵が僕を待っていてくれる。小さかったあの頃、僕を勇気付けてくれたあの道のあの風景みたいだからだ...... 幼稚園に入園した日僕は、母と離れるのが不安で1日中泣いていたのを今でも何故か覚え

          第2章 [第3話]《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2章[第2話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第1話はこちら 相手に合わそうとしてきただけなのよね。 相手に合わせて生きてきたから、 気持ちを隠そうとしてしまうのね。 やっぱりわたし達、似た者同士なのね。  ※ ※ ※ それからも僕には幾人か、好きになった人はいた。だけどどれも片思いで、いつも言われるのは「友達じゃダメなの?」という言葉だった。「友達として失いたくない」とも、何度言われたことか。そしてその都度僕は、苦しみながらもその言葉を受け入れてきた。 その愛の種類が何でもいい。愛する人に、必要とされる人でいた

          第2章[第2話] 《ユウとカオリの物語 -ジェンダー編-》

          第2章[第1話]《ユウとカオリの物語-ジェンダー編-》

          どんなユウも、わたしの好きなユウよ。 こんなに可愛い人がわたしを好きになってくれるなんて。 こんな幸せはないわよ。  ※ ※ ※ 僕はずっと子供の頃から、着ぐるみを着て生きてる気がしていた。 着ぐるみは何着も持っていて、その時々で周りの人たちが笑ってくれる着ぐるみに、僕は着替えるものだと思っていた。着ぐるみを脱ぐのは両親の前だけで、着ぐるみがないと他人とは接することができなかった。 10代の頃は色んな着ぐるみを試しては変えて、いつしかその中にいる本当の僕のことなんて、いっ

          第2章[第1話]《ユウとカオリの物語-ジェンダー編-》