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【怪談実話107】大阪の怪炎、二題

【1話目】

女性Xさんの目撃談。

ある日、買い物を済ませて大阪府内の自宅に戻った時のこと。旦那さんと2人のお子さんがいるが、まだ誰も帰っていない時間だった。正確な時刻は不明だが、外は明るかったそうだ。いつものように、がちゃりと鍵を玄関のドアに差し込み、ぎい、と開けた。

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

真っ赤に燃えた男の首だけが、叫びながら家の中から飛び出してきた。
そのままどこかに飛び去っていったという(これ以上の詳細は不明)。

「後にも先にも、あれっきりよ」

【2話目】

女性Yさんの目撃談。

当時中学生だった彼女は、友人の犬の散歩に付き合うことになった。いつも散歩させているという大阪府内の霊園に一緒に歩いて向かう。霊園は広く、その一部は小山の形状になっており、螺旋状の道が頂上まで続いている。頂上まで登れば、辺り一面パノラマの絶景が広がっている。

時刻は夕方5時ごろ。まだ明るい時間帯だった。
霊園の山頂辺りにたどり着いた時、突然、友人の飼い犬が吠えだした。犬の視線の先に目を向けると、10メートルぐらい前方、2メートルほど高さに野球ボール大の火の玉のようなものが浮遊していた。橙色で蝋燭の炎のようにゆらゆら揺れていたという。

Yさんは本能的に恐怖を感じ、友人と犬と一緒に一目散に逃げ出した。山頂から螺旋状の道を駆け下った。麓まで一直線で逃げたいのだが、構造上、小山をぐるぐる周って逃げるはめになり、それにより怖気が増した。

火の玉を見てすぐに逃げ帰ったため、追跡されたかどうかは不明だそうだ。

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※1話目について
この話を伺ったとき、「姥ケ火」(うばがび)という妖怪に類似すると感じた。炎に包まれた老女の顔だけの妖である。ちなみに姥ケ火も河内国(現在の大阪府)に伝わる。大阪の平岡神社から灯油を盗んだ老女が、その祟りによって怪火になったと云われる。

※鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776年刊行)より。「河内国にありといふ」の記述が見られる。

※2話目について
ふたりとも目撃している点、飼い犬が吠えている点が興味深い。私も昔、島根県の「黄泉比良坂」(よもつひらさか:あの世とこの世の境目とされる場所)で柴犬を連れて散歩したことがあるが、全く吠えなかった。

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