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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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#妖怪

【怪談実話115】河童の行列

一九八〇年代、当時小学三年か四年だった陽子さんが、鹿児島の父親の田舎に一家で帰省した時のことだ。その際、父親の実家とは別の家宅に車で連れて行かれた。 「父は、子供の頃にその家の屋根裏を探検しては怒鳴られたと言って笑っていました。でも、それが親族の家なのか他人の家なのか何の説明もなかったんです。田舎の人って、いっつもこうなんですよ」 しんと静まり返った田舎の夜道をひたすら車で進み、その家に到着したのは真夜中だった。茅葺き屋根を有する大きな日本家屋。そんな造りの民家は今まで見

【怪談実話107】大阪の怪炎、二題

【1話目】 女性Xさんの目撃談。 ある日、買い物を済ませて大阪府内の自宅に戻った時のこと。旦那さんと2人のお子さんがいるが、まだ誰も帰っていない時間だった。正確な時刻は不明だが、外は明るかったそうだ。いつものように、がちゃりと鍵を玄関のドアに差し込み、ぎい、と開けた。 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお 真っ赤に燃えた男の首だけが、叫びながら家の中から飛び出してきた。 そのままどこかに飛び去っていったという(これ以上の詳細は不明)。 「後にも先にも、あれっき

【怪談実話97】一反木綿

女性Aさんが20歳の時の話。 当時彼女は、福岡県のとある団地のマンション1階に住んでいた。その団地は、T字路の突き当りの正面に位置している。1階のため、夜に道路の正面から車が進入すると、その車のヘッドライトの光が部屋に差し込んでくる。 ある夏の夜、換気のために窓を10cmほど開けており、窓に合わせてカーテンの端部も開けていた。 夕食後に台所でコーヒーを淹れていると、カーテンの向こうから、やたらと眩しい光が見えてきた。車のライトかと思ったが、ライトの位置にしては高すぎて違

【実話怪談64】殺生石(栃木)

7年前の9月、都内に住む女性経営者Rさんは家族とともに栃木県の那須高原に旅行に出かけた。その際、購入して間もないデジカメを持参し、行く先々で写真を撮影していた。 その2日間の旅行の途中、彼女だけ現地の友人と合流して名所をいくつか案内してもらったそうだ。その1つに、「殺生石」(せっしょうせき)という観光スポットがあった。 殺生石とは、那須湯本温泉近くに存在する溶岩だ(見出し画像)。 その昔、九尾の狐が美女(玉藻の前:たまものまえ)に化けて権力者をたぶらかし悪行を重ねたために

【実話怪談45】川辺の生き物

「あ、思い出した」 女性Uさんが小学3年の頃、家族でテレビ鑑賞していたときに母親が呟いた。そのとき流れていたのは映画「プレデター」。シュワルツェネッガー演じる軍人率いる特殊部隊が、森の中で宇宙人(プレデター)に襲われるアクションホラー映画だ。プレデターは、光学迷彩を駆使して姿を透明化する特徴がある。 ・・・ 1960年代、福島県西部でのことだ。母親が小学1年の時の夏、夕方頃。年上の兄弟らと外で遊んでいたら、急に大雨が降ってきた。今で言うゲリラ豪雨だ。そのため、彼女は兄弟

【実話怪談43】お客様は神様?

12年前の夏。当時女子大生だったAさんは、地元のユニクロで夏休みの短期バイトに勤しんでいた。 地方都市の市街地にある店舗であり、高校生が万引きすることが多く店長も頭を悩ませていた。「学生が入店したら注視すること。試着室に入ったら特にマークすること。不審な点があればインカムですぐに知らせること」などが徹底されていた。 ある日曜日、Aさんは初めてメンズコーナーを担当することになった。 午前中。夏の最終セールと秋物入荷が重なる日で、店内は混雑していた。このような日は特に万引き

【実話怪談13】天狗

飲食店経営者のT氏から伺った話。 この方は非常に感受性が強く、不可思議な事象を数多く経験されている男性である。 25年ほど前の夏、当時10代だったT氏がキャンプのために北陸地方を訪れていたときのこと。 夜間、T氏を含め8人を乗せたワゴン車は海沿いを走行していた。左手側には日本海が、右手側には鬱蒼とした林が広がっている。 一番後ろの座席に座っていたT氏がぼんやりと海側を車窓から眺めていると、海側の道路上に、上空に伸びる光の束が目に映った。 目を凝らすと、光の中に人が立