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林檎飴 裕介side2

休日だというのに、俺は朝から近所のカフェで営業の同期の男とモーニングをしている。

目の前にいる榎本大樹という男はさっきから俺の顔を見てやたらニヤニヤしているから、無性に苛立ってきたんだが…

「おい!大樹!

お前さっきから人の顔みてニヤニヤしやがって何か言いたい事でもあんの?

仏の裕さんと言われている俺だが、怒る時は怒るんだからな?」

「裕ちゃんったら、つれないのね。

せっかくいい情報教えてやろうとおもてたけど…

やーめた」

「大樹…

いいかけてやめるとかお前…

わざと煽ってんだろ?

どうせつまんないネタだろ?

お前の彼女の妄想話を信じ込むのはやめとけ!

女って現実と夢のはざまで生きてるのが大半なんだからさぁ。

それを信じて人に伝えるとお前への信頼感が薄れるぞ?

俺たち営業には情報は大事な武器だが、ニセの情報と正しい情報を見分ける力が無いと命取りになるからな!」

裕介は、少し冷えた珈琲を飲み干すと店員にオカワリを頼んだ。

大樹は、気まずそうな顔でトーストにジャムを塗りながら…

「あー。昨日、別のヤツにも似たような事を言われたわ…

俺に判断能力がないのを口にするのは構わないけど、彼女を妄想女呼ばわりするのやめてくれないかな…

裕介くんよ!」

「悪い、悪い…

あの娘さぁ、お前と付き合う前に何回も榎本君と葉山君てつきあってますか?って聞いてきたんだよ。

おかしくないか、思考が…

腐女子なのは、個人の趣味だから好きにしたらいいけど同僚を腐女子的妄想のネタにするのはカンベンして欲しいわ」

「あーっ、確かに俺にも葉山君と付き合ってる?って聞いてきたわ!

俺が葉山よりも、君の方が好みだけどって答えたら…

じゃあ、私たち付き合おうかっ?て言われて付き合う事になったかな?」

そんな話をしながら…

大樹は、冷めているであろう珈琲にミルクと砂糖をたっぷり入れてかきまぜている。

コイツって甘党なんだなぁと、砂糖を追加する大樹を眺めながら裕介は思った。

んっ?

結局、コイツは何の為に休みの朝から俺を呼び出したんだ?

もしかして、彼女とケンカでもして朝から追い出されてヒマだから俺を呼び出したのか?

などとモヤッていると…

「今から俺の言う事は信じなくてもいいけど、千夏から聞いた話じゃなくて俺が目撃したんだからな!」

「なんだよ…

前フリ長すぎ!!

早く話せよ…

俺もそんなにヒマじゃないんだから」

「最初に言っとくけど、俺に八つ当たりすんなよ?」

「わかったって…で?なんだよ?」

「あのさ、昨日の夜なんだけど会社の近くのコンビニで凛子ちゃんに会ったんだけどさぁ…

男と待ち合わせしてたみたいで、男が車で迎えにきてたわ。

何か年上のイケメンだったぞ。

車もいいヤツ乗ってたし?」

「ふーん、で?

何で凛子の話を俺にしてくんの?」

裕介は、特に動揺する素振りも見せずシラケた顔で大樹に聞いてきた。

「そりゃ、お前が凛子ちゃんに惚れてるからに決まってるだろうが…

てか、本命は他にいて凛子ちゃんは当て馬なのか?

このモテ男が!

もしかして、凛子ちゃんと仲良い美人の先輩狙いかよ?」

「俺が凛子に惚れてるって誰が言ってんの?

勝手にウワサ流されるの迷惑って伝えといてよ。

それと、静香先輩でもないし…

お前は、女どもから仕入れたウワサうのみにし過ぎ!

お前には、何も話す事ないからかえるわ!

これ、モーニングの料金な」

大樹に千円を渡すと裕介は席を立ちカフェから出て行った。

あいつ…

仏の裕さんとか言いながら、めっちゃ切れるやん!

怖い顔してたなぁ…

アイツを推してる女どもに見せたかったわ。

暇つぶしにならなかったなぁ…

大樹は、砂糖を山ほど入れて甘くなった珈琲を飲みながらメッセージアプリを眺めて、暇つぶしさせてくれそうな相手を物色するのだった。

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