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第二の人生

もう限界!
自分の時間が欲しい!

娘の芽衣が第3子を出産した。
大変喜ばしい事だが、私は憂鬱だった。
何故なら、芽衣は孫達の世話を全て私に押し付けるからだ。

「ママは子育てに慣れているし、孫達に会えて嬉しいでしょ?
 私も息抜きしたいしさ。」

朝から晩まで孫達の面倒を見なくてはならず、食費等の全ての費用はこちら持ち。
保育園に入れるお金は無いからと、我が家を無料の保育園代わりにしている。

子供の頃から生意気で、学生時代はずっと反抗期。
家出や警察のお世話になる様な事を度々繰り返し、20歳で出来ちゃった婚をした娘。
「早くに結婚し、早くに3人の子供を出産した私は親孝行で偉い!」と思っている様だが、散々迷惑をかけられている私はそうは思わない。

お向かいの山木さん家の美和ちゃんの方が、娘の100倍位、親孝行だ。
子供の頃から穏やかで品行方正、結婚後もご両親を気遣い、度々実家に顔を見せに来る優しい娘さんだ。
お子さんはまだだと聞いているが、今の時代、夫婦2人で楽しむ人生も良いと思う。

私達も夫婦2人でのんびりしたいのに、そんな時間は全く無い。
体力やお金もそろそろ限界だし、色々な意味で疲れ果てている。
上2人の孫は娘に似て、口が悪く、生意気だし!

*****

「借金!?」
「そうなの。
 だから、お金を貸して貰えないかしら?
 少しで良いから。」

「借金は幾らなの?」
「…500万円。」

「ご、500万円!?
 どうしてそんなに借りたの?
 パパには相談したの?」
「株で失敗して、大損失を出してしまったの…。
 お父さんに頼めないから、芽衣に頼んでいるんじゃない!
 お父さんの退職金にも手を付けているから、知られたら、きっと離婚されちゃうわ。
 お願いだから、絶対に内緒にして。」

「もー、何やってんの。
 そんなお金は無いよ。」
「そうよね。
 でも、私は孫達の世話で、働く時間は取れないし…。
 お父さんは再雇用だから、お給料が低いし…。
 だから、こうして芽衣に頼んでいるのよ。」

「だから、そんなお金は無いって!」
「そんな事を言わないで、私を助けてよ。
 もう、どうしたら良いか分からないのよ。
 私ね、最近おかしいかもしれないって思う時が有るの。
 ノイローゼかもしれない。
 気付いたら、ネットで臓器売買とか、人身売買とか調べているのよ。

「は?
 何言ってんの?」
「臓器も人もね、若ければ若い程、高く売れるのよ。
 新鮮であれば新鮮な程ね。」

「何なの!?
 怖いんだけれど!
 あのさ、子供達は暫く連れて来ないからさ、仕事を見つけて、早く借金返済しなよね。
 私を頼られても困るから、自分で何とかするんだよ。
 パパには内緒にしておいてあげるから。
 じゃあね!」

*****

「芽衣達は急に来なくなったな。
 お前、何か言ったのか?」
ちょっと…可愛い嘘をね。
 芽衣をきちんと自立させないとって思って。
 お父さんは孫達に会えなくて、寂しい?」

「いや。
 たまにで良いかな(笑)。
 頻繁に会うと、お前が疲れるだろうし、嫌な面も見えてしまうだろうからな。
「私もたまにで良いわ。
 このままずっと会わなくても良いかもしれない。

「孫達と何か有ったのか?」
「うううん。
 孫達とは何も無いけれど、芽衣は「もう子供達に会わせないからね。」が口癖だったから。
 自分に不都合が事が有ると、いつもそう言って、私を従わせるの。
 でも、孫達に会えなくても良いから、自分の時間が欲しくなっちゃった。

「そうか。
 芽衣は昔から、困った娘だからな。
 これからは自由に過ごして、好きな事をすれば良いよ。」
「有難う。
 第二の人生を満喫するわ。

子供がいるから幸せとは限らない
孫がいるから幸せとも限らない。
その存在が足枷になる事も有る。

それにしても、芽衣があんな嘘を信じてくれる単純な娘で、本当に良かった。


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