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戦大国四:逆打ち 1

 時は平安、舞台は四国。青い海、広がる田畑、雄大な山々を背景に,、足の生えた寺が人を食う!
 あれこそ機動寺院! 弘法大師・空海が「寺の方から人間に参拝する」というコンセプトに建造した次世代型の寺院は今、正体不明の仏敵によって狂わされ、人を食い、徳を吸い上げて殺戮する末法兵器と化した。このままでは四国の民は半年を待たずに全滅するであろう。
 この運命に立ち向かう勇者はただ一人。対仏ライフルを手に、線香手榴弾を帯に、般若心経を懐に忍ばせ、愛と勇気を心の中に閉じ込めた男。
 衆生が絶望したときに立ち上がり、歓喜に沸いたときにそっと去る男。
 その男の名はジョン・田中。比叡山より不殺傷の戒律を破ることを許されし破壊僧。
 彼が手にする青く光る金剛杖には、弘法大師の人格がインストールされている。密教に由来するテクノロジーを極め、機動寺院を建造した彼が、名実ともに杖となってジョンを支えるのだ。
 彼らを引き合わせたもう一人の人物、彼こそジョンを破戒兵器に鍛え上げた最後の登場人物だ。
 その名も腕白大師。この名を覚える必要無し。
 徳島に至る途上、霊山寺による砲撃を受けた彼は、その直後にジョンの物語から姿をくらました。
 そして彼は全てを失うことになる。装備を、服を、名前も、記憶も。
 否! 彼は何も失ってはいない!
 百八十センチを越える体格、全身に蓄えられた筋肉、衆生を想う慈悲、果たしてそれらが彼をどこへ導くのであろうか……。

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