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猫の額にしがみついて

実家を出るとき、1番怖かったのは
愛猫に忘れられてしまうこと。

「猫はヒトではなくて場所に懐く生き物だ。」
「猫の記憶は2日で消える。」

そんな都市伝説的なことをたくさん聞いて、
ビクビクしていた。
毎晩のように私のベッドに入ってきては
いっしょに寝ていた私の愛猫。
子猫時代は数時間おきにご飯をあげなきゃいけなくて、
夜中に起きて、眠い目をこすりながら世話をした。
私が仕事から帰ると、おもちゃの棚の前に座って、
私を見つめてにゃーにゃーないた。
「おいで!」と言って歩き出すと、
小走りで追いかけてきた可愛い可愛い私の愛猫。

実家を出る日、最後にそんな「彼」をギュッと抱きしめた瞬間が、1番うるっときた。
わけもわかっていなそうな「彼」はいつも通り、気だるそうに寝そべっていた。

そりゃあ実家の母にも姉にも会いたくはなる。
でも、人間同士は、電話もLINEもできる。
猫とのコミュニケーションはそうはいかない。面と向かって、直接触れ合わないと満たされない。

幸い、実家までは電車を乗り継いで1時間半。

私は「彼」に会いたくて、
「彼」の小さな額のその中に
忘れられることなく存在していたくて
月に1度は実家に帰る。

この連休でも帰省した。
私がいなくなってから、「彼」は母の部屋で寝るようになったと聞いた。
甘え下手だけど、夜は誰かの近くで眠りたい男。

私が泊まりにいくと、
私の足元をふみふみふみふみ。
脇の下にぐりぐり入ってきて
丸くなってゴロゴロいう。

1ヶ月ぶりに会っても
ちゃんと鼻を合わせてクンクン挨拶してくれること。
一緒に眠れること。

猫との絆を再確認する月に一度の帰省。

誰だ、
「猫はヒトではなく場所に懐く生き物だ。」
「猫の記憶は2日で消える。」
なんて言ったやつ。

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