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夕焼けはずっとなまえのない感情

小学生の頃から、綺麗なグラデーションを描いて染まった夕焼けの空を見たり、早朝のちょっと冷たい爽やかな風を感じると、思わず涙が出ました。
あの気持ちに名前をつけるなら、とうまい言葉を考えてみましたが、全く何も浮かばない。
わたしの中ではずっと一番の「なまえのない感情」です。

結局今でも、どうして泣けるのかはよく分からないまま。
けれど、みんなが楽しそうに校庭で鬼ごっこに夢中になっているのに、1人だけ、夕焼けを見て泣くなんて、随分変な小学生だったと思います。
だからいつもそんな気持ちは隠しておきました。

けれど、わたしが涙脆いのかといえば、そんなことはなく、みんなが泣けると話題にしている、ドラマや映画ではあまり泣いたことがありませんでした。
友達の恋バナにもあまり心は動かない。
ドラマや誰かの話にあまり泣かないわたしに、周りの友達には冗談でよく「感情が無いよね」と言われていました。

何かに心を動かされて涙が出るとき、それは自分だけが知る過去の思い出や感情にその景色を重ねているのか、それとも自分ですら知らない感情が込み上げてくるのでしょうか。

わたしは双子の姉がいますが、たまにする、決して2人にしか分からない会話があります。
一緒に歩いているとき、夕方の湿った風の匂いや、夏の夜のちょっとムッとした空気を感じたとき、すかさずどちらかが「これ、いつのとき?」と尋ねます。
それに、「あー、これは…何か中学の時の野外キャンプのナイトハイクの時っぽい」と答える。それに対して「たしかに!」と同調する時もあれば、「えー違うよ。これは、中学の部活の帰り道だよ」と答える時もあります。
周りから見れば意味が分からない会話だし、かなり変なはず。
けれど、わたしは思い出を共有できることももちろんだけれど、
空の色とか空気の匂いを感じて、何かを思い出したり考えたりすることを誰かに話せて共有できることって、すごく嬉しいんだなと気付きました。

友達にはなかなかそんな話をしません。
急に、「あ、この風の匂いでこんなことを思い出すわ」と語り出せるほど、わたしは自分のことを晒け出せません。

晒け出せない代わりに、わたしは不意に涙が出るようななまえのない感情に、文字を重ねて、noteにそっと共有をします。
いつか誰かと、そんな話をしてみたいな。

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