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なまえのない感情たち

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今までの小品たちを集めました。 ひっそりと読んでください
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#オリジナル小説

ミネラルウォーター

酷く喉が乾いて目が覚めた。 カーテンの隙間から、昨夜激しく降っていた雨は、もう止んでしま…

moon
5年前
16

散ってゆくけれど

「もうすぐサクラもお終いだねぇ。きっと、今夜の雨で全部散ってしまう。」おばあちゃんは、縁…

moon
5年前
4

知らない。

だから心の扉だけは固く戸締りしていたのに。 ひとり、しんとした部屋で夜を迎えるのが少し…

moon
5年前
8

午後15時の紅茶

基本のステップなんて、アン・ドゥ・トロワ 先生のカウントが無くても簡単に踏めてしまう。 口…

moon
5年前
5

さめてゆくの

目を瞑ると時計がカチカチ針を進める音が聞こえる。この音が刻み込まれるたび、残された温もり…

moon
5年前
14

かくれんぼ

暗闇は怖い。 知らない世界で迷子になってるようで。 まだ私は幼くて、田舎のちょっとした商…

moon
5年前
6

かなしみのいろ

僕の持つ真っ白なパレットには世界が広がっている 赤、黄、青、黒、白、そして混ざり合って出来た奥行きの深い緑に夕焼けの周りに広がるような橙、危うげなコンクリート色 「それでは色を一色だけ画用紙いっぱいに塗ってみましょう」 少し甲高い声で教師が言った。3限目、美術の時間。 僕はどんな色を塗れば良いか分からなくてしばらく周りの友達の画用紙を眺めていた。 斜め前の奴の画用紙は真っ青な絵の具からそのまま出したような青で染まっていく。 水分をあまり含まずに雑にジグザグに塗られた青色

破片

「ねぇ、永遠なんて信じる?」きれいな薄ピンクのネイルが施された指先で自分の腕をなぞりなが…

moon
5年前
2

アイスキャンディ

見慣れたはずの道の先がぼやけて何も見えない。 まるで異世界へ繋がる入り口に向かっているよ…

moon
5年前
6