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325【母の日に】

2020年5月10日(日)は母の日。感謝の気持ちを込めて、こどもたちは赤いカーネーションを贈ったり、こどもたちなりの気持ちを込めた贈り物を母へ贈ったりしているように思います。新型コロナウィルス感染拡大防止のために、マスクを着用したり、外出自粛要請のため自宅で過ごしたりと、こどもたちも強いストレスを抱えながら生活を送っているのではないでしょうか。家では人と人の距離がどうしても近くなり、家族や兄弟姉妹間のトラブルも多くなりがちではないかと心配しています。こんな時だからこそ、人にやさしく思いやりをもって過ごしてほしい。この困難に挫けることなく、学校再開まで元気に、工夫しながら過ごしてほしい。そんな願いを込めて、吉野弘さんの「奈々子に」という詩を紹介します。

奈々子に  吉野弘

赤い林檎の頬をして 眠っている 奈々子

お前のお母さんの頬の赤さは そっくり

奈々子の頬にいってしまって ひところのお母さんの

つややかな頬は少し青ざめた お父さんにもちょっと

酸っぱい思いがふえた

唐突だが 奈々子 お父さんは お前に

多くを期待しないだろう

ひとが ほかからの期待に応えようとして

どんなに 自分を駄目にしてしまうか

お父さんは はっきり 知ってしまったから

お父さんが お前にあげたいものは

健康と 自分を愛する心だ

ひとが ひとでなくなるのは

自分を愛することをやめるときだ

自分を愛することをやめるとき

ひとは 他人を愛することをやめ

世界を見失ってしまう

自分があるとき 他人があり 世界がある

お父さんにも お母さんにも

酸っぱい苦労が増えた

苦労は 今は お前にあげられない

お前にあげたいものは

香りのよい健康と かちとるにむづかしく

はぐくむにむづかしい 自分を愛する心だ

 こんな時だから、愛することを大切にしてほしいと願っています。離れているのに、みなさんの声や姿を隣に思い浮かべ、なんでもいいので、いま出来ることを続けましょう。

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