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008【よいところだけ見ていく】

会社経営者に聞く。
「業務効率の悪い社員、使えない社員がいたら、どうしますか?」
多くの経営者はこう答える。
「解雇します。」
そして、こう付け加える。
「ですが、法的な手続きが難しくて、解雇するのは難しい。」

教育しても無駄。言ってもわからないし、時間と労力の無駄。無駄。そんな子は、学校の教室にもいるなぁ。どこの教室にも一人はいる。教室では「解雇」することなんて出来ないから、インクルーシブ教育や特別支援教育、発達心理学の知識や実践が必要とされている。効率の悪い、使えない。そんな人の多くは、何らかの障碍がある場合が多い。だから、心理学、コーチング、カウンセリングを学ぶ。そして、障碍に名前をつける。でも、多くの場合、障碍に名前をつけて安心してしまう。障碍に名前をつけるってことは、保護者も、教師も、同級生も、地域も、社会も、障碍に対応していくってことだ。

いまの社会は目的を失っている。目的が無いわけじゃない、失っている。ぼくたちは、課題を乗り越えて、成長し、課題なんて一つもない世の中を作ろうとしている。そんなの出来っこないのに。一人一人が100点満点になることを目指そうとしても、それはあり得ない。社会の目的は、一人持ち点3点で、どうやって100点満点になるように工夫するかだ。
33人の仲間を集めて、100点に近づける。
10人で100点になるように知恵を出す。
反省を促して、叱って、ダメなところを何度も何度も言い聞かせたって、多くの人は変わろうとしない。ほんとは変われるのに。3点が4点になることは、ほぼあり得ない。でも、3点の人が二人集まれば、3点+3点で6点になることも、3点×3点で9点になることも、時には15点になることだってある。遅刻する子は、大人になっても遅刻する。宿題をやらない子は、大人になってもやろうとしない。消極的な子は、大人になってもどこか消極的だ。迷惑をかける子は、最後まで迷惑をかけてくる。課題を直して個々の能力を挙げようとするよりも、個々の良いところを見付けて活用させた方がよっぽどいい。

どんな人にも、一つ、良い所はある。持ち点が0の人間はいない。せっかく持ち点があるんだから、それを見つけて、ぜひ生かしてもらおうと思う。「解雇」なんて、もったいないじゃないか。そして、経験上、「解雇」しても、新しい集団からまた新しい「解雇」の対象が生まれてくる。集団から排除する選択は、結局は無意味なんだと思う。課題をいくら直したところで、また新しい課題がどんどん出てくる。障碍なんて名前をつけることが、目的じゃないはずだ。日々、よいところを一つ見付けていく。繰り返していくうちに、必ず生かしてもらえる機会が顕れてくる。それが楽しいんだ。見つけて生かすまでは、とてつもなく辛く悲しく、イライラすることが満載だが、それでもせっかくだから生かしてもらおうと思う。こんなに耐えて、わがままに付き合ってきたんだから、一つくらいその持ち味を俺のために生かせと。そして、その一つが実はとてつもなく大きな意味を持っていたりするから人生は面白い。

多様性を訴える人は、実は、誰より人を差別する。
支援を必要とする人は、実は、誰より自分勝手だ。

使えない部下は排除すべきなんて正論を言うより、使えるところを見付けてその良さをぜひ発揮してもらおうと思う。この世の中に、よいところが何一つないなんて人間はいない。ただ、タイミングとか、相性が合わないだけ。

反省させない、欠点を無理に直させない、叱らない、怒鳴らない教育は、きっと面白い。明治維新から150年目の明けた年、よいところだけを見ていく教育にチャレンジする。

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