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【日本全国写真紀行】47 福岡県朝倉郡東峰村小石原

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。


福岡県朝倉郡東峰村小石原


柳宗悦に「用の美の極地」と言わしめた小石原焼の里

 日本三大修験山のひとつで知られる霊山・英彦山ひこさんの麓、標高1000メートル台の山々に囲まれた盆地に、焼き物の里・小石原がある。この一帯の山々からは質の良い赤土が取れる。寛文五(1665)年、高取八之丞がここで陶土にぴったりのこの土を発見し、窯を開き、主に茶道用の陶器を焼き始めた。小石原焼の始まり。その後、茶陶だけでなく、食器や花器など日常の暮らしを彩るさまざまな陶器を作り始めた。
 小石原焼の特徴は、ロクロを回しながらかんなで土を削る「飛び鉋」、刷毛はけで模様を描く「刷毛目」「櫛目」「指描き」などの特殊な技法で表現する独特の模様で、素朴で温かく、優しい質感が持ち味だ。
 大正時代、小さな山里の村で作られていた小石原焼の名を全国的に有名にしたのは、柳宗悦である。柳は、小石原焼の独特の技法を「用の美の極地」という言葉で賞賛した。このことは当時マスコミに大きく取り上げられ、小石原焼は一躍人気の焼き物となった。また昭和50年には陶磁器で初めて国の伝統的工芸品に認定された。
 実は最初の開窯以来、小石原焼の窯元は一子相伝の慣習を守ってきた。だがこうして民藝ブームが巻き起こったことから、焼き物を求めて小石原を訪れる人が増え、その需要に応えるために窯元は広く人材を集めるようになる。世襲制は徐々に和らぎ、町には個人窯元も増えていった。現在、小石原の窯元は五十以上ある。それぞれが小石原焼独自の伝統的技法を守り伝えつつ、新たな技法にもチャレンジし、新しい作品も作り出している。
 さて、そんな小石原の町は、町を縦断する国道211号線の沿線に多くの窯元が並んでいて、そこが「陶芸ロード」と呼ばれるメインストリートだ。だがここだけではなく、絶対に訪れて欲しいのは、「道の駅小石原」横の脇道を入った「皿山」というエリア。ここが小石原焼発祥の地で、古くからの窯元が10軒以上点在している。
 皿山には石畳が敷かれ、積み上げられた薪や窯の煙突、店の前でずらりと天日干しされている素焼きの器など、焼き物の里らしい風情ある光景が見られる。石畳のエリアは全長約250メートル。道の駅に車を停めて、ここはぜひ歩いて欲しい。豊かな自然に包まれた道沿いに、点々と現れる茅葺きや古民家の窯元は、みな店舗を持っていて、正価品のほかお買い得品もけっこう並べている。一軒一軒訪ねれば、それぞれの模様や形の違いがわかって面白いし、きっとお気に入りの一品が見つかると思う。

※『ふるさと再発見の旅 九州1』産業編集センター/編 より抜粋





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