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全国最中図鑑

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日本を代表する和菓子の一つである「最中」。香ばしいパリパリの皮とともに餡を頬張れば、口の中にふわっと広がる品のよい甘さ。なんとも幸せな気分になるお菓子です。編集スタッフが取材の途…
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#ご当地

「全国最中図鑑」52 よーじや謹製 手作り最中(京都府京都市)

京のあぶらとり紙で知られる「よーじや」の歴史は、1904年、舞台化粧道具の行商から三条に店を構えた「国枝商店」に始まる。 大正初期、世間で口腔衛生が注目され始めた頃、初代が歯ブラシの商いを始めた。その頃、歯ブラシは「楊枝(ようじ)」と呼ばれていたことから、人々に「楊枝屋さん」と親しまれるようになり、この愛称を店名に改めたという。 昭和40年、2代目が手描きした、手鏡に京の女性の顔が映っている絵をロゴマークとして採用し、よーじやの全国展開と共に、このおしゃれな「よーじやマーク」

「全国最中図鑑」15 杵の最中(山形県上山市)

山形県上山市にある創業200年を超える老舗・杵屋本店が製造販売している最中。餅つきでお馴染みの竪杵と呼ばれる縦長の杵の形をした皮で3種類のあんを包んでいる。 最近では杵は横杵が主流だが、昔は何人もの男たちが竪杵で餅をついた。その古来の姿を思い浮かべて作られたものだという。 粒あん、抹茶あん、白ゴマあんの3つのあんを、薄い皮に丁寧に手詰めしており、昭和35年の発売以来、半世紀にわたって愛され続けているロングセラーだ。 単品販売はなく、全て3つの味の詰め合わせになっている。 杵

「全国最中図鑑」14 塩もなか(長野県大鹿村)

南アルプスの雄大な自然に包まれた人口1,100人ほどの小さな村、大鹿村。 映画『大鹿村騒動記』で一躍有名になったこの村には、ここでしか味わえない名物もなかがある。甘さを抑えた白餡に、村内でとれる山塩を加えた、約50年の歴史を持つベストセラー「塩もなか」である。 大鹿村では、地元の鹿塩温泉の源泉を煮込んで山塩を作っているが、山塩は全工程が手作りで、1リットルの塩水から30gしか作れない貴重な塩なので「幻の塩」とも呼ばれている。 この山塩を白餡に練り込んだ餡は、ほんのり塩味が利い

「全国最中図鑑」10 奥州二本松 拾万石(福島県二本松市)

奥州二本松藩は、織田信長家臣の猛将・丹羽長秀の孫、光重が10万石で入府して以来、明治維新まで11代続き、丹羽家は今でも「にわ様」と呼ばれ愛されている。 二本松藩が歴史上もっとも知られているのは「二本松少年隊」の悲劇だろう。戊辰戦争で二本松藩は新政府軍と戦ったが、この時、12〜17歳の少年兵部隊が、二本松城落城の際、戦いの最前線で取り残され、戦いに巻き込まれて殉死した。この悲劇は会津の白虎隊と並び称せられ、彼らの最期はNHKの大河ドラマ「八重の桜」でも描かれた。 「奥州二本松

「全国最中図鑑」 9 翁最中(長野県松本市)

松本の老舗和菓子店・翁堂の看板菓子「翁最中」。能面をかたどった最中は全国にあるが、この翁の面はともかく柔和で優しい顔をしているのが特徴。ほっぺた、額、あごがすべてぷっくりと膨らんで、深く刻まれたシワもユーモラス。手にすると思わず微笑んでしまう最中だ。 あんこは粒あんかこしあんか? と思いつつ皮を割ってみると、意外や意外、深―い緑色の抹茶あんが飛び出してくる。さすがのサプライズ! なかなか風流な最中である。 翁堂 長野県松本市大手4-3-13 「全国最中図鑑」をまとめて読み

「全国最中図鑑」 6 芭蕉最中 (山形県山形市)

松風屋は大正10年創業、100年の歴史を持つ老舗和菓子店。 初代社長が松尾芭蕉を敬愛していたことから、芭蕉最中を考案したという。 芭蕉は元禄2(1689)年5月7日(旧暦)、尾花沢から新庄へ向かう途中、寄り道して山形市の立石寺(りっしゃくじ)に立ち寄った。そこで有名な  閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声 の句を詠んだ。立石寺は東北を代表する古刹で、通称「山寺」と呼ばれている。門を入って大仏殿のある奥の院まで1015段の石段があり、「一段一段踏みしめて上がっていくうち、一つず

「全国最中図鑑」 5 雪舟もなか(岡山県総社市)

総社市は平安時代、僧であり水墨画家として活躍した雪舟の生誕地である。市の郊外に宝福寺という古刹があり、雪舟は幼い頃そこで修行していた。 ある日、修行をサボって絵ばかり描いている雪舟に住職が腹を立て、お仕置きとして柱に縛りつけた。しばらくして住職が戻ってみると、今まさにネズミが雪舟に噛みつこうとしていた。驚いて駆け寄って見ると、それは雪舟が自分の涙で床に実物そっくりに描いたネズミの絵だったーーー。 雪舟もなかは、この伝承から生まれた、可愛らしいネズミの形をしたもなか。岡山県産