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カナダ・モントリオールで新酒をしぼる

造り酒屋の軒先。茶色の丸い玉を見かけることがある。この玉は、
2~3月頃になると緑の玉に替えられるのだとか。


杉玉(すぎたま、すぎだま)とは、スギの葉(穂先)を集めてボール状にした造形物。日本酒の造り酒屋などの軒先に緑の杉玉を吊すことで、新酒が出来たことを知らせる。「搾りを始めました」という意味である。

ウィキベディア


一度だけ酒蔵開きに行ったことがある。
新酒が出来上がる2月の北風が冷たい頃、庭先で粕汁やぜんざいの接待を
受けた。新酒の試飲や利き酒もあった。

隅っこの古い小さな蔵の中。白濁した酒を柄杓ひしゃくで湯のみに注いでもらった。米だけで作られた酒なのに、果物のような味と香りが口の中に広がっていく。衝撃的な瞬間だった。
その時の体験が、今の発酵食や日本酒の興味へと繋がっている。


あの日の強烈な味覚、嗅覚の記憶。カナダ移住したこともあり、自宅で日本酒を造りたいと思うようになる。そのきっかけとなったのがコレ↓

私のバイブル

初版は1984年で、2020年に復刻版が出ている。
完全に発酵オタク向きの本。


この本を参考にしながら、初めてどぶろくを作ってみたのが2018年。
菩提もとという発酵させるための酒母(スターター)作りから始めた。
原料は生米、米麹、水を混ぜて暖かいところに置いておく。
3日目。蓋を開けると白い膜が浮かんでいた。生米は粉々に割れていた。成功かどうか判断できず、ただ出来上がった液体を菩提酛ぼだいもとと思い込む。

蒸し米、米麹、水と菩提酛を合せて本格的に仕込む。少しずつ発酵が進み、かき混ぜるとシュワシュワと発砲の音が響いてくる。

1週間ほどでどぶろく一号が出来あがった。市販のものよりも度数が高く、酸味は感じなかった。このどぶろく1号の一部を残し、次の仕込み使いながら2号、3号と作り続けた。


12月中旬に仕込んだものが、3週間ほどで出来上がった。それを自宅の小さなキッチンで搾る。ザルで荒く漉す。液体と酒粕とに分ける。自家消費なので加熱処理はしない。白く濁った液体をそのまま置いておくと、上のほうに黄色を帯びた透明の液体(上澄み)が表れる。プロだったら活性炭を使って脱色して無色透明にしたり、味や香りを調整する。けれど、そこまで追求はしない。そのままの味を楽しみたい。


酒を醸す。異国の台所でふつふつと命の泉が湧き出す。
目には見えない神秘な世界が現れてくる。
百薬の長の復活をカナダで願う。


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