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カナダに向う飛行機の中で

福岡から羽田空港に向う機内で、いつも同じような気持ちになる。
次はいつ日本に来られるだろうか。その時、両親は元気でいるだろうか?
なんとなく寂しさを感じながら、ひとり座席から外を眺める。

* * *

エアカナダとスターアライアンスで提携している全日空。福岡空港カウンターで国際線乗り換え、最終目的地モントリオールまでの手続きを済ませる。その際、国内線は富士山が見える窓側の席をお願いする。普段はほぼ通路側に座るのに、この区間だけは、なぜだか窓側の席に身を置きたくなる。

富士山が見えるかどうかはその日の運次第。見えないこともよくあるけれど、見えた時はワクワクする。福岡から見えないこの山への憧れは、人生半ばをとっくに過ぎた今でも不思議とあせることがない。


母が長期で入院することになり、実家の生活が落ち着くまで手伝おうと一時帰国した。2ヶ月後、一旦カナダに戻ることにした。
このタイミングで帰っていいんだろうか?
不安を抱えたまま、羽田行きの飛行機の中でKinKi Kidsのベストアルバムを聴いていた。ロックやジャズの気分ではなかった。鬱々したまま外を眺めていると、その日は綺麗に富士山が見えてきた。

シートベルト着用のサインが点灯し着陸態勢に入った頃、左側の窓は夕日でオレンジ色に染まった。海もオレンジ色に輝いていた。遠くにそびえたつ富士山。その時に流れてきたのは『全部だきしめて』だった。


乗り換えたエアカナダの機内は、英語とフランス語でアナウンスが流れている。突然、日本の空気感が消える。それでも頭の中では全部だきしめてが鳴り響く。通路を歩く足取りは重くない。カナダ・モントリオールの街に想いを馳せる。久しぶりに再会するパートナーの笑顔がふと浮かんだ。


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