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【緩募】こういう時、お客様にどう対応したらいいの?【無料】

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いつもnoteでいろんな方の悩みに答えている、林伸次さん。今回は少し趣向を変えて、林さんが最近困っている、インバウンド消費が盛り上がっているからこそ起きる問題を考えます。だれか助けて!

時々現れる、グラスワインのテイスティング希望者

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

僕、渋谷でワインバーを26年間やっているんですね。それで、3年に1回くらい、こういうことがあるんです。

まず、全員が英語を話す欧米人のお客様という状況でのことです。そのお客様に、僕が今日のグラスワインを説明します。欧米の方なので、ボトルとラベルを見せながら、「白ワインは、今日は3種類あって、アルザスのリースリングと、ロワールのソーヴィニヨンブランと、南仏のヴィオニエです」と言うと、「リースリングはドライ?」みたいな質問をされます。

そして「じゃあこのソーヴィニヨンブランを2杯」と注文されて、その白ワインをグラスに注いでお出しするわけです。これがよくある流れなんですが、だいたい3年に1回くらい、「このリースリング、テイスティングできる?」って質問されるんです。

ワインって、テイスティングというのがあるんです。例えば、「シャトー・マルゴー1989」とか「ジュヴレイ・シャンベルタン2015」とかいろいろ書いてあるワインリストから、お客様がこの1本というのを選んだら、「こちらがシャトー・マルゴー1989年になります」って実物を見せて、コルクを抜いて、グラスに少しだけ注いで、お客様の前にお出しします。

お客様が確認するのは、そのワインが「美味しいかどうか」ではなくて、そのワインが「傷んでいるか、それとも正常な状態のワインなのか」なんです。ワインって、コルクの状態が原因で、傷んでしまうことがあるんですね。それで、このワインは、傷んでいるか、それとも正常な状態のワインなのかっていうのを、お客様に少しだけ飲んでもらうことでチェックしてもらいます。問題なければお客様は、「大丈夫です」と伝えて、お店側の人間が、あらためてグラスにたっぷりと注ぐというわけです。

この、3年に1回ほどある「このリースリング、テイスティングできる?」という質問は、明らかに、そのワインが自分の好みなのかどうかを「試し飲みしたい」って仰っているわけです。もちろん僕が知らないだけで、このお客様のお国では、もしかしたら一般的に行われているという可能性もあります。

こんな時、どうすればいいのかだれか教えて!

でも、ワインって1本750ml入ってまして、グラスワインだと6杯で出すのが世界標準なんですね。1杯が125mlです。最近は、円安もあって輸入ワインが高騰しているので、7杯どりだったり、8杯どりというところもなくはありません。750mlのワインを7杯どりだったら1杯は107mlで、8杯どりだったら1杯は93mlです。

テイスティングでワインを注ぐとしたら30mlは必要でしょうか。例えば、1杯が1000円や1200円でお出ししているグラスワインの300円分くらいを、「美味しいかどうかの確認」のために、無料でお出しすることになってしまうんです。みんなにOKとしてしまうと、1日20人のお客様に3回ずつ無料でお出しすることを考えるので、かなりの損失になりますよね。

例えば、「このグラスワインで出しているワインを、ボトルで注文したいんだけど、好みかどうかテイスティングできる?」って言われたら、まあ仕方ないかなって思えますが、グラスワインを好みかどうかテイスティングするのは、金額的にあいません。もしお店としてそれをやっていくには、それなりに値上げも考えないといけなくなります。もちろん、一番安価なグラスワイン値上げをしたら確実に売上個数は減るので、利益を維持するのは簡単な話ではありません。

だから、「グラスワインをテイスティングできる?」って質問されたら、「ノー、ソーリー」ってお断りしているのですが、この返答でいいのかどうか、それが最近の大きな悩みなんです。その方々からすれば、「ええ? うちの国では普通だよ。ちょっとくらいいいじゃない」って感じるのはわかるのですが、それをOKにしてしまうと、うちは大打撃を受けると思います。

これを細かく伝えられる英語力は僕にはないですし、「日本ではそれはちょっと無理ですよ」って伝えていいのかどうかも自信がありません。どういう風に説明したらいいと思いますか? あるいは、他の飲食店のみなさんは、外国のお客様に「グラスワインをテイスティングさせて」って言われたら無料でお出ししていますか? 

ぜひ、同業者の方、あるいは欧米経験がある方、教えていただけないでしょうか。僕が断るとしたら、なんて断るのが正解なのかも教えていただけると助かります。

できれば、全てのお客様に、心地よい時間を感じていただきたくて、ご教示ください。

※下にコメント欄がありますのでよろしくお願いいたします。

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林伸次(はやし しんじ) 1969年生まれ。徳島県出身。1997年創業の渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。本連載の書籍化『ワイングラスのむこう側』『大人の条件』はじめ書籍多数。また『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』など、小説も執筆。

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