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ふりかえるクセ

企画を考えている時、「〇〇さんはどう思いますか?」と事業の担当スタッフやプロジェクトメンバーに声をかけることがある。そうすると、「✗✗さんはこう言っていた」「□□さんにはこっちの方がウケるし、企画が通りやすい。」といった返答が返ってくることがよくある。それはそれでわかるが、質問の意図は「あなたの考えを聞かせてください。」ということだ。意図を伝えて改めて同じ質問をすると「・・・。」としばらく沈黙が続く。

大学を卒業して就職したのは仙台に拠点を置くせんだい・みやぎNPOセンターだった。中間支援と呼ばれるNPOをサポートする仕事だ。2008年当時、NPOに就職するということ自体は珍しく(今でも珍しいかもしれない。)、周りの友人にはそんな人は誰一人いなかった。私もよくわからないままにダラダラしてても仕方がないからとりあえずやってみるか、と軽い気持ちで働き始めた。同時期に採用されたのは私を含めて4名。1名は50代ぐらいの女性で、私と同世代の20代の男女1名ずつ。最初の2週間はきちんと研修期間が設けられ、NPOに関する基礎知識、組織の特性と目指す方向、具体的な業務、働く上でのマナー、注意点などについてとても丁寧にレクチャーいただいた。1時間から2時間程度のコマが設けられ、1日で数コマのプログラムに分けられていた。プログラムによって、レクチャーいただく先輩スタッフも変わり充実した研修期間だった。(ちなみに研修が始まって2,3日後に50代のスタッフは早々と退職した。理由はわからない。)

私にとっては、初めて社会人として働き始めた職場だったので何もかも新鮮だったが、今、思い出すと特に印象に残っていたのがふりかえりの時間だ。毎回一コマの最後の10分で「ふりかえりシート」なるものを必ず書かされる。「ふりかえりシート」と名付けられているものの、A5サイズの紙を横長に使って名前と日付、自由記述欄の項目があるシンプルなシートだ。これを毎回レクチャーの最後に書くのだが、「単なる感想ではなく、気づいたこと、学んだこと、疑問・質問を書くように」と各コマを担当する先輩スタッフから念を押される。こうなると「おもしろかった。」「楽しかった。」などでは済まされない。どこかどう発見だったのか、レクチャーを受けて自分はどう考えるのかなど、毎回、ぐるぐる頭を回転させながら、苦しんで書いていたことを思い出す。しかも書いたシートは研修を受けているメンバーで共有され、さらにそこから議論に突入することもある。意見の相違があれば、相違点を明確にして、さらに議論を深める。こんなことを毎時間繰り返しているとレクチャーを聞いている途中でも「私はこう思う。こう考える。」ということを頭の中で思考するようになる。新人研修以外のスタッフ同士の勉強会や事業の終了後に度々ふりかえり時間は設けられ、すっかりふりかえるくせがついてしまった。このふりかえる癖が後に「こう思う」という自分の意見を示すことへのハードルを下げてくれた。

仕事の中でなかなか自分の意見を言えない人は、まずは目の前で起きた現象を自分の言葉でふりかってみる練習から始めてみてはいかがだろうか。

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