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シェアスタッフのおもしろい仕事

ここ数年でコワーキングスペースが全国的な広がりを見せている。働き方の変化、スペースのシェアによるコストの削減、新しいビジネスチャンスとコミュニティの形成・・・。目的や狙いによってコワーキングスペースの性質は異なるが、コミュニティマネジャーなる肩書の方を配置して、スペースのコミュニティを活性化させることを意図している施設も多い。単なるシェアオフィスではなく意思を持って、人・モノ・お金・情報を循環させようとしている。そこで市民活動の拠点施設に勤務経験があり、現在もコワーキングスペース等に多少関わりのある人間として、施設のスタッフで働くおもしろさをいくつかまとめてみた。個人的な経験のため他の人にとっておもしろいかどうかはわからないが、一つの視点として参考にしていただきたい。また、「コミュニティマネージャー」という呼び名には今のところピンとこないのでここではとりあえず「シェアスタッフ」とする。

シェアスタッフのおもしろい仕事①「意図的に人と人とをつなげる」
館内利用者で「この人とこの人をつなげたらおもしろいかも。」「この人とこの人は相性が良いかも。」などスタッフの意思で人をつながる。つなげると予想通りその場で盛り上がる場合もあるし、後になって仲良くなるケースもある。そこから新しい仕事やプロジェクトが始めることもある。日々、さまざまな方が出入りするのがシェアスペースのおもしろさで意外と利用者側は一部分しか見えておらず、スタッフの方が全体を見ているので持っている情報量も多いはず。少し引いた俯瞰の目でその場を捉えて、ややおせっかいぎみに人に人を紹介する。その後、勝手に何かが動き出したらおもしろい。
先日も親しくしている入居者に館内でたまたま会った映像クリエイターの方を紹介したら今度いっしょに仕事をすることになったらしい。
ただし、押し売りされたり、やりたくないプロジェクトに巻き込まれたり変なくっつき方をする場合もあるのでやたらめったらつないだりしない。紹介したスタッフの信頼を失うこともあるので見定めることも必要。

シェアスタッフのおもしろい仕事②「常に新しい人と企てる」
イベント等を企てる時はできるだけ新しい人を巻き込む。頼みやすいのでついつい親しい利用者や関係者に声をかけがち。それが続くとメンバーやコミュニティの固定化を招きかねない。内容にもよるが、新しい企画を考える場合は、できれば半分以上は新しい人やなにか新しい要素を加えたい。知らない人に依頼をするのは勇気がいるし、会ったことがない人だとどんな人なのかわからないので怖さもある。ただ常に空気の入れ替えは必要で、それをできるのはスタッフ。オファーしても断わられることは前提で、依頼してみるとすんなり了承してくれることも多い。思い切ったチャレンジは、施設だけではなく自分にとっても新しい世界が広がる。それも楽しい。私もトークイベントで話を聞いてみたい人はダメ元で直接会いに行ったり、メールを送ったりする。直接会いに行くとだいたいの人は喜んでくれるので、それをきっかけに依頼することも多い。場が固定化してきたな、と思ったら新しい空気をいれる。それができるのはスタッフの特権だ。

シェアスタッフのおもしろい仕事③「空間に自分しか知らない変化を加える」
「植物の位置を変える」「チラシの置き場を変える」「新しい花瓶を置く」「BGMを見直す」「いつもと違うところに座る」「椅子の配置をずらす」「絵を飾ってみる」など日々の業務の中に少しだけ変化を加える。毎日、同じ施設や場所にいると自分自身の思考や視野も固定化しがち。小さなことでも良いので自分の身のまわりの見慣れた風景を少しだけ変えてみる。そうすることで新鮮な気持ちで仕事ができる。利用者の中にも変化に気づく人がいるかもしれない。 ある本屋さんはこまめに本の配置を変えるらしい。不思議なものでレイアウトを変えるとこれまで動かなかった本が急に売れる時がある。何でもいいから試しにちょっとだけ変えて自分や利用者の変化を楽しんでみるのもおすすめ。慣れてくると自ずと空気が淀んでいる空間が見えるようになる。

シェアスタッフのおもしろい仕事④「情報発信の切り口を変える」
サービス内容、空室情報など施設の基本情報を発信するのに加え、ために切り口を変えての情報発信を試みる。「利用者ミニインタビュー」「コピー機の豆知識」「シェアキッチンの調理器具を写真を交えて紹介」「スタッフのお気に入り」「もともと何のビルだったのか-建物歴史紹介」「初めての利用者の感想」など。切り口を変えればいくらでも紹介のしようがある。切り口を変えれば異なる層に情報が届く。基本情報ばかり発信で少しマンネリ化してきたと思ったら少し切り口を変えて、反応を見る。施設の個性を出すにはスタッフの個性を出すことも大事。そのために情報発信の仕方に少し個性を乗っけてみる。

シェアスタッフのおもしろい仕事⑤「もらいものはおすそわけ」
もらいもの、特にお菓子や果物といった食べ物は積極的に利用者におすそわけ。食べ物をもらって嫌がる人はほとんどいない。自分がどこかに旅行へ行った時のお土産を配っても良い。同じものをいっしょに食べれば空気も和むし、空間も明るくなる。もらった方も次はおすそわけするかもしれない。そこから新しいコミュニケーションや関係性が生まれる。

シェアスタッフのおもしろい仕事⑥「たまに異質なものを投入する」
普段、見慣れた空間に見慣れないものを置いてみる。例えば、メインテーブルにレコードプレイヤーとレコード、大量の雑誌、民芸品、新聞、自分のコレクション。なんでも良い。シェアスペースには何だか似つかわしくない変なものをドンと置いてみる。利用者がおもしろがって声をかけるかもしれないし、「そういえば私もレコード好きです。」と、利用者や他のスタッフと思いがけない共通点が見つかるかもしれない。アイディアに行き詰まっている人に取っては、何かのヒントになるかもしれない。何気ない会話のきっかけとして、当たり前の空間に異質なものを投入してみるのもおもしろい。

シェアスタッフのおもしろい仕事⑦「場を編集する」
多様な人が集まるシェアスペースには、モノ・コトがたくさん集まる。スタッフも気づかないうちに資源が増えている。資源が増えるものの中には活用されていない資源もある。施設全体を一つの広場と捉えてあこちこち転がっている資源を上手に活用して、新たな価値を加える。そのためには編集の視点が必要である。例えば、壁面を使って地元にギャラリーに協力を仰ぎ、若手のアーティストの作品発表の場とするとか、以前紹介した他人のいらないものを自由に持って帰れるGIVE BOXもその一つだ。入居者にライターがいれば文章の書き方講座を入居者限定で開催するのも良い。調理方法に例えられる編集だが、素材(資源)を活かすも殺すも編集の腕次第である。腕前をあげるには練習しかない。調理といっしょだ。

以上、私の経験から改めて考えたシェアスタッフの仕事のおもしろさをまとめてみた。すぐに実践できることもあるので一つでも試していただけるとうれしい。

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