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アトツギ甲子園に行ってみた

みなさんは「アトツギ甲子園」というビジネスコンテストをご存知ですか?

このイベントは、全国の40歳未満の事業後継者、つまり”アトツギ”が自らのファミリーが受け継いできた家業をこれからの時代で生き残るように変革していくために新規事業を開発することを目的としたビジネスコンストです。

全国から192名のジャンルも業態も規模も異なるアトツギたちが名乗りをあげ、西・中・東日本の3ブロックに分かれて予選を行い、3/3に品川グランドホールにて予選通過をした15名がそれぞれの分野で事業プランを披露しました。

私も実はファミリービジネスの後継者で、自らの事業を次の時代へ繋いでいくべく日々色々な挑戦を模索している”アトツギ”の一人なんですね。そんな同年代の仲間に刺激を受けるべく、今回は会場へ潜入しました。


アトツギの半端ない熱量

まず、会場に入って感じるのが半端ない熱量とピリピリする緊張感。

主催の中小企業庁がこのイベントにかける思いがイベントの空気から感じられました。

・・・と同時に、アトツギである自分も何をしてるんだ。と感じさせられる刺激あふれる空間でもありました。

このイベントの根幹には、「ベンチャー型事業承継」という考え方があります。いわゆる第二創業のことですね。早稲田大学の入山教授がおっしゃるにはファミリービジネスは他の企業と比べて成長率も利益率も高い傾向にある。そんな企業は事業後継者による第二・三創業を経て生まれ変わりながらファミリーが50年後・100年後を見据えて企業を運営しているケースが多くみられるそうな。ですので、ベンチャーを支援することも素晴らしことだが、中小企業の後継者を応援することで日本経済に地殻変動が起こるのでは?という考えがあるようです。


両利きの経営とセンスメイキング理論


アトツギたちのこれからにとって、非常に重要になってくるのが入山教授曰く、「両利きの経営」「センスメイキング理論」です。


両利きの経営

両利きの経営とは、元々”ambidexterity”とよばれるイノベーションのジレンマを乗り越える考え方で、既存の領域を深掘る「知の深化」と新たな領域を開拓する「知の探索」の両方をバランスよく行わなければ、イノベーションの壁は乗り越えられないというものです。詳しくは下記より。

一般的な企業は、知の深化は得意で自らの既存領域を磨いていくことに長けているが一方知の探索は不得手。しかしながら、アトツギたちは自らが得意とする領域をファミリービジネスに持ち込みことによって開花させていく可能性を秘めているということのようです。

センスメイキング理論

センスメイキング理論は、特に昨今のような不確定で読めない展開が日々怒っている現代では確固たる事実に基づいた決断を積み重ねるよりも、これまでの背景やストーリーなどに基づいた合理性・納得性に基づいて物事を判断すべきだという考えです。(私なりの言葉では)

この考え方はアトツギだけでなく、日本の企業が全体的に不得手にしていることのようで、ストーリーに基づいて事業を展開していくことが求められているようです。なのでビジョナリー経営やMVVの明示化が求められているんですね。


躍動するアトツギたち

実際に私が本イベントで見たアトツギたちはまさにこれらの考え方を踏襲した上で前に進もうともがいているように見えました。

一つ例を挙げましょう。

参加者の1人に京都の印刷関係の会社をファミリービジネスにお持ちの方がおられました。
この方の提案する新規事業は「新しいトレディングカード」
自らをレアカードであると称して、ファミリービジネスがこれからも躍進していくことを堂々と胸を張って発表されていました。

これはまさに「知の探索」の象徴と言える形ですね。

印刷をしたり、関連商品を卸売したりすることから、自ら印刷ができるビジネスの強みを活かしながらトレーディングカードという自分の趣味を活かして事業プランを構築していました。

事業の背景や有形・無形資産から見てもストーリー性もあるように思えますね。

もちろん彼はこれから自らの事業をもっともっと磨いて躍進していくと感じさせれました。


まとめ

このイベントへの参加を通して、まず大きな刺激を受けたのは間違いないのですが、それよりも入山教授のおっしゃられる考えと自分の中でもやもやしたものが少しつながったのは大きな成果でした。

USJを成功に導いた森岡さんがおっしゃっていた発言の一つに、

私は苦手を克服して大成した人間を見たことがない

というものがありました。

ファミリービジネスに知の探索による恩恵を運ぶプロセスは、まさに自らの長所をこれまでの企業文化・事業・慣習によって潰すことなく生かしきり、事業へ昇華させていくことを言うのではないかと感じたのです。

トレーディングカードの事業を提案する彼はまさにそれを体現しているようでした。

自らの可能性を信じて、長所を伸ばし切ってやろうと考えたお雛祭り当日でした。

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