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メーカー希望小売価格とオープン価格

小売店やテレビ通販などで『メーカー希望小売価格から●●%OFF』という表記を見かけます。円安の影響もあり価格に対する基準が揺らいできているような昨今では、今まで以上に目に留まるかもしれません。しかしこの表記はかなりグレーな部分もあり、一度世間的にも問題視された過去があります。

メーカー希望小売価格とは

メーカーが小売店に対し、消費者に対しこの価格で売ってほしいという価格の目安を示したものである。ただし、このメーカー希望小売価格のとおりに販売するかどうかは各小売店の自由であり、メーカーが希望小売価格で販売することを小売店に強制することは、書籍など一部の商品を除いて独占禁止法で禁止されています。そのためメーカーはあくまでも小売店に対してはお願いレベルでしか要求できません。

オープン価格とは

製造業者が自社の製品の定価を決定せずに、小売り業者が販売価格を自由に決定する方式のことである。歴史的にみるとオープン価格制はメーカー希望小売価格の代わりとして、1970年代初めに一部の商品に適用され始め、1980年代に入り家電製品などから徐々に広がり、1990年代以降になると急速に広がり、現在では日用品や加工食品など様々な分野で使われるようになった。

メーカー希望小売価格との違いは、メーカーが売価を設定するのに対しオープン価格はメーカーはこの値段で納品するので販売価格は各お店様に任せますという点で誰が消費者に売る価格を決めるかの違いです。

オープン価格制導入の理由

そもそもなぜメーカーが希望小売価格を廃止しオープン価格を導入するのか?オープン価格制によって何が変わるのか?大きく二つの理由があります。

◆二重価格問題
オープン価格が初めて取り上げられるようになったのは、 1965年頃からメーカーの価格設定の不透明さに対する消費者運動がきっかけです。メーカー希望小売価格と実売価格の大幅な乖離という二重価格問題を解消する手段として、1971年に家電製品にオープン価格が導入された。

希望小売価格の下ではメーカーが自由に価格を決めることができ、小売店も自由に価格を設定できるため、メーカーと小売店が組めば消費者を騙すことも簡単です。例えばあるメーカーがホットプレートを新商品として発売を決定し、小売店は10,000円で販売したいとします。しかしただ10,000円で販売してもインパクトにかけるため、小売店はメーカーに対し20,000円で希望小売価格を設定することを依頼します。そうすることで店頭で『メーカー希望小売価格から50%OFF』を謳う事が可能になります。このような手法が横行し、消費者は何を信じていいか分からなくなりました。今ではある一定ルールは出来ましたが、曖昧なルールであり、完全に防ぐ手立てはないためそのような表記をしている小売店もまだ存在します。

◆値引き(リベート)問題
小売店間の競争があまりなく、メーカー希望小売価格で製品を販売することが可能な場合であれば問題ありませんが、量販店での家電製品の販売をみれば明らかなように、希望小売価格どおりに販売されている商品はほとんどありません。小売店間の競争が厳しくなり、消費者の価格に対する感度が高まる中では、メーカー希望小売価格で販売することは難しく値崩れが生じる。値崩れが起こると売価を下げたくなくても他店に負けないため値下げをせざるを得ない状況になる。値下げをすると利益も減る。そしてこの減った利益分に対し、小売店がメーカーに値引き(リベート)を求める。このような流れも当時はメーカー希望小売価格を設定するから、小売店から値引き(リベート)を求められると考えられていた訳であり、オープン価格を導入すれば避けられるのではないかと考え、各メーカーがこぞってオープン価格制を採用した。

オープン価格制導入の結果

二重売価は企業のモラルに依存する部分が多いため、完全には払拭はされていないが多少は減っているのではないかという印象です。
値引き(リベート)はメーカーと小売業者の力関係に依存する部分が大きいため、メーカーがオープン価格化によってリベートの削減を目指しても、小売の力が強い場合が多く解消されていません。むしろアマゾンや楽天などのネット販売の台頭もあり、昔よりも価格に対する感度がより高まっている印象です。そのような中がパナソニックが2020年の春から新たな価格の概念を導入しました。それが”メーカー指定価格”

メーカー指定価格とは

パナソニックによる値引き不可の商品戦略。一部の商品に関して家電量販店が在庫リスクを負わない代わりに、パナソニックが販売価格を指定し、そこからの値引きを認めないというもの。ショップの独自ポイントも指定価格に上乗せされる形で付与されており実質的に売価はどの店舗で買っても同じとなる。先述したがメーカーが流通業者の販売価格を拘束することは独占禁止法で違法とされている。 一方でメーカー指定価格の場合、パナソニックが在庫リスクを負うことでメーカーが直接販売していることになり、販売価格を決めても違法とはならないという論理である。つまり通常だと、家電量販店がメーカーから仕入れた段階で商品は基本的に家電量販店の所有物となるがこの制度の下では、パナソニックの所有物となるため価格の統制が可能になる。

「指定価格」の導入により、消費者にとっては、いつでもどこで同じ価格で購入できる安心・信頼感がある。小売店としては在庫リスクがなくなり、必要以上の価格下落が回避されることで利益を確保できる。また、店舗が在庫リスクを負わなくて済むことから、これまで売れるかどうか分からない高付加価値製品を、店頭在庫として置くことに躊躇があった小規模店舗でも導入に踏み切れる。メーカー(パナソニック)としては、商品の値崩れすることなく販売し続けることで利益を確保でき、無秩序な価格下落を防ぐことで商品寿命の長期化も図れる。

まとめ

メーカーにとっては頭を悩ませる値崩れ。ただ消費者にとっては安く買えるためメリットの方が多いと思います。しかし店頭などで商品を購入する際にはメーカー希望小売価格から50%だからお得だと安易に思わないようにしてください。一度ネットで検索しアマゾンや楽天などでは実際いくらで販売されているのかを確認してみてください。そうすると本当に安いのかどうかの参考になるかと思います。

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